(扉)特集にあたって

  • 竹内靖博 Takeuchi, Yasuhiro
    虎の門病院分院 院長
    野田光彦 Noda, Mitsuhiko
    国際医療福祉大学 市川病院 教授(糖尿病・代謝・内分泌内科)/埼玉医科大学 内分泌・糖尿病内科 客員教授
公開日:2025年5月9日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(3): 0031./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(3): 0031.
https://doi.org/10.57554/2025-0031

 内分泌代謝・糖尿病内科専門医の存在は、医療機関の診療の質の向上に大きく貢献する。周術期の血糖管理はいうまでもなく、何らかの内分泌代謝領域の問題を抱えている患者はまれではない。これらの患者の病態を見逃してしまうか、それとも正しく診断して適切な治療を提供するかによって、治療効果や患者の満足度は大きく変わってくる。ひいてはその医療施設の評価にも大きな影響をもたらすであろう。日常的に出くわすありふれた症状や検査値異常に内分泌代謝疾患が潜む可能性は必ずしも低くなく、それを相談する受け皿があることにより、診療の質全体の向上にも寄与し得ることが期待される。内分泌代謝科を志す医師には、自らの適切な評価と判断が、医療の質を左右していることを肝に銘じていただけるよう、切に願っている。
 一方で、内分泌代謝領域の専門医を目指さない医師にとっても、日々遭遇する訴えに多くの内分泌代謝疾患が潜んでいることを理解しておくことは、自らの診療の質の向上に大きく貢献するであろう。臓器別診療科による診療が一般的となり、各領域の専門医は自らの定めた範囲から外れる症状や主訴に無関心となる傾向があることは必ずしも否めない。特に高齢患者の抱える医療的なプロブレムは単純ではなく、そこには多様な病態がオーバーラップしていることがある。全身倦怠感・易疲労感は極めてコモンな愁訴であるが、問診によってその具体的な問題のありかを整理することで、潜在する内分泌代謝疾患の可能性が見えてくることがある。あまりにもありふれた訴えであるがゆえに、つい聞き流してしまったり、自らの専門領域の視点からの評価に止まったりしていることはまれでないと想像される。
 本特集は、以上のような背景から、本誌が対象とする内分泌代謝領域の専門医および専門医を目指す医師にとってはいうまでもなく、それ以外の領域の医師にも有意義な情報を提供するものとして企画された。この特集を目にする全ての人々にとって、明日からの診療に役立つものであることを編者一同確信している。

著者のCOI (conflicts of interest)開示:竹内靖博;講演料(協和キリン、アレクシオンファーマ)

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