はじめに Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor:GPCR)は細胞膜タンパク質における最大のファミリーで、ヒトでは800種を超えるメンバーから構成される。ホルモン、神経伝達物質、感覚刺激などさまざまな細胞外シグナル分子(リガンド)に対する細胞応答を仲介する。多様な生理反応に関わり、数多くの疾患に関わることも報告されていることから、創薬の標的としても注目度が高く、実際にGPCRを標的とした治療薬が臨床で用いられている。昨今、糖尿病および肥満症の治療薬として使用され、適応外使用でも問題となっているGLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬も、その分子標的であるGLP-1受容体はGPCRである。
はじめに 脂質異常症は冠動脈疾患を中心とする動脈硬化性疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)の予後を決定する重要な危険因子であり、遺伝的な脂質異常症においてでさえ食生活の是正が予防や治療の基本である 1)。そのため、食事に関する脂質(エネルギー源である脂肪とエネルギー源でないコレステロールを合わせたもの)の生化学的な代謝と臨床的なエビデンスを正しく知ることが重要になる。またダイエットパターンとしての日本食や地中海食、dietary approach to stop hypertension diet(DASH食)が注目されている。本稿では、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』 1)と『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』 2)を中心にASCVD予防のための食事療法を解説する。なお、内容の詳細や引用文献、また食物繊維(穀物、野菜、果物)、果糖を含む加工品、海藻、ナッツ類などは誌面の都合上割愛するが上記ガイドラインを参照されたい。
Q&A編はこちら はじめに Glucagon-like peptide-1(GLP-1)は小腸の消化管内分泌細胞であるL細胞から分泌されるペプチドである。食事による血糖上昇に応答する形で膵β細胞のGLP-1受容体に結合し、β細胞からのインスリン分泌を促進するため、血糖上昇時のみにインスリン分泌をもたらすことが特徴である。GLP-1はdipeptidyl peptidase-4(DPP-4)により分解され活性を失うため、GLP-1受容体作動薬はDPP-4による分解を受けにくい構造を持ち、GLP-1受容体を刺激することで血中GLP-1を薬理学的濃度まで上昇させ血糖降下作用が得られるように開発された。GLP-1の膵外作用として、胃内容物排泄遅延、食欲中枢における食欲抑制も認めることから、GLP-1受容体作動薬には体重減少効果も期待される。加えて、近年では心血管イベントや腎イベント進行抑制のエビデンスも明らかとなってきていることから、実臨床で使用されるケースが年々増加しており、本稿では各製剤の特徴および実際に使用した症例に関して解説する。
はじめに 高トリグリセライド血症(高TG血症:hypertriglyceridemia)は、血中トリグリセライド濃度(TG値)が異常高値となる状態であり、高コレステロール血症とともに脂質異常症の代表的な疾患である 1)。TG値が空腹時採血で150mg/dL以上、または随時採血で175mg/dL以上であれば高TG血症となる(表1)。高TG血症は動脈硬化性疾患の重要な危険因子の一つであるほか、TG値が著明高値の状態は急性膵炎の発症要因である 2)。一般外来で日常的に遭遇する高TG血症は、そのほとんどがいわゆる生活習慣病として生活習慣の改善を含めた治療介入を必要とする。本稿では高TG血症の病態とともに、治療介入のポイントについて、特に動脈硬化性疾患発症予防の観点でどのようにすべきかを中心に解説する。
ポイント NAFLD患者はわが国で2,000万人以上存在するといわれている。 NAFLD/NASHは肝硬変および肝がんに至る病態である。 NAFLD/NASHに対する薬物治療について多くの臨床試験が進行中である。 新たな概念として脂肪肝をSLDという形でまとめ、その下でのMASLD/MASHなどの新しい名称による疾患分類が提唱された。 MASLD/MASHは代謝、循環器など臓器横断的な疾患としての意味合いも包含している。
当サイトは、糖尿病・内分泌領域において医師・医療スタッフを対象に、臨床に直結した医療情報を提供する電子ジャーナルです。
該当する職種をクリックして中へお進みください。