付随する糖尿病・内分泌Q&Aがあります はじめに インスリン発見から100年の時を経て、近年のインスリン製剤やデバイスは著しい進化を遂げている。インスリン製剤やデバイスの組み合わせによって治療法にも選択肢が増え、1型糖尿病においてもオーダーメイド医療が意識されるようになってきた。血糖コントロールは、食事、運動量、ストレスなど、生活のすべてが影響する。患者のライフスタイルに合わせた治療法を提案するためには、インスリン製剤やデバイス類に精通し、それぞれのメリット・デメリットを把握しておく必要がある。本稿では、現在本邦で行うことのできる1型糖尿病の治療法についてデバイスを中心に述べる。
はじめに 副腎クリーゼ(急性副腎不全症)や褐色細胞腫クリーゼは、放置すれば致死的病態に至る内分泌性緊急症の代表的疾患である。副腎クリーゼではステロイドが急激に絶対的または相対的に欠乏することで循環障害やショックに至る。慢性副腎不全症患者に種々のストレス(感染、外傷など)が加わり、ステロイド需要量が増加した場合や膠原病、自己免疫疾患などで長期服用中のステロイド薬が不適切に減量・中止された場合の発症が多い 1)。ステロイド補充や投与の病歴聴取が診断の鍵となるが、症状が非特異的であるため、救急対応において診断に難渋する場合も少なくない。下垂体卒中は副腎クリーゼの成因の一つであり、下垂体腺腫の突然の出血や梗塞によってACTH、コルチゾールの急激な分泌低下をきたす 2)。一方、褐色細胞腫・パラガングリオーマは副腎髄質または副腎外傍神経節に存在するクロム親和性細胞から発生するカテコールアミン産生性の神経内分泌腫瘍で、潜在的に転移性であることから、悪性腫瘍の取り扱いとなっている。薬剤、造影剤、食事、排尿など種々の要因によりカテコールアミンの急激な過剰分泌をきたし、顕著な高血圧(高血圧クリーゼ)や標的臓器障害が誘発される 3)。本稿ではこれらの病態と加療について概説する。
日曜日の昼下がり、突然、温泉に行きたくなる。福井に住んでいた三十数年前なら、夕陽が沈む時間を見計らって車を飛ばし、越前海岸の日帰り温泉「漁火(いさりび)」に向かっていたところだ。露天風呂にゆったりと浸かり、潮騒に耳を澄ませながら、夕陽が水平線に完全に沈むまで日本海の景色を堪能する。丸い太陽が水平線に隠れるほんの少し前には、オレンジ色の光が一瞬真横に広がって、今日一日への別れの挨拶のように見える。日が完全に沈んだ後の、海の碧と空の青との間に横たわる茜色のグラデーションも、太陽が退場した後の余韻として誠に相応しい幕引きだ。
はじめに 生理的条件下でヒトの血糖値(グルコース濃度)はおおむね70~130mg/dL程度の範囲に維持されている。中枢神経はグルコースをエネルギー源として利用し、肝臓や腎臓は糖新生を行い、神経系やホルモンを介して糖代謝恒常性が維持されている。低血糖はこの糖代謝恒常性維持機構に何らかの異常をきたすことで発生する。すなわち低血糖症を見つけ、原因を追究することはその背景にあるさまざまな疾患を診断・治療する契機にもなり得る。本稿では低血糖症を病因別にまとめ、外来や病棟での鑑別、緊急時の対応方法を概説する。
はじめに 糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)と高浸透圧高血糖状態(hyperosmolar hyperglycemic state:HHS)は高度のインスリン作用不足と脱水を背景によって生じる糖尿病の急性合併症で、救急外来でしばしば遭遇する。また、乳酸アシドーシスはビグアナイド薬の副作用として知られており、まれではあるが致死率の高い疾患である。本稿ではこれらの病態と、診断・治療について解説する。
内科診療において最も現場感覚を要するものが緊急時の対応であろう。糖尿病・内分泌疾患の臨床もその例に漏れないことは言を俟たない。したがって、そのような状況では、十分な経験を有することがまさしく円滑な治療に繋がるが、『糖尿病・内分泌プラクティスWeb』の今号の特集では、若手医師にとっては実体験を補完するものとして、そしてベテランの医師にとってはご自身の臨床を振り返りつつ新たな視点を加えるものとして、身近にご活用いただける企画になっているものと確信している。 本特集では、冒頭、勝山修行先生に、糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態、さらには乳酸アシドーシスについて、手際よく具体的におまとめいただき、次いで、山田穂高先生には、低血糖症の病態と具体的な対応策について、広い視野に基づいて詳述していただいている。 さらに、内分泌領域では、柳瀬敏彦先生に、放置すれば死に至る、内分泌性緊急症の代表的な疾患である副腎クリーゼと褐色細胞腫クリーゼについて、深いご経験から敷衍していただき、就中、急性副腎クリーゼの原因疾患の一つである下垂体卒中についても別項立てで取り上げていただいた。また、田中祐司先生ほかの先生方には、同じく致命率の高い甲状腺クリーゼと粘液水腫性昏睡について、最近のガイドラインや診断基準を踏まえてシステマティックに論考していただいている。 後半では、電解質異常について、まずは宮田 崇先生と有馬 寛先生に、臨床上高頻度に緊急症を来しうる血清ナトリウム異常について、その病態、症状、鑑別診断、治療について代表的な原因疾患とともにご解説いただき、次いで、菱田吉明先生と曽根正勝先生には、ともに麻痺、痙攣、致命的な不整脈などを引き起こしうる高、低カリウム血症について、体内のカリウム調節機構から緊急時の対応まで、実際に即して展開していただいた。そして最後に、山本昌弘先生には、高、低カルシウム血症について、その症候と病態生理、鑑別診断から、さらには具体的な治療に至るまで、具体的に描出していただいた。 本特集の執筆陣は、その分野に広範な経験と知識を有する専門家の方々である。ご執筆の先生方のご尽力を多とするとともに、今回の特集によって読者諸賢の理解が深まり、それによって得られたものを臨床の現場にフィードバックしていただければ、企画者としてこのうえない喜びである。 著者のCOI (conflicts of interest)開示:本論文発表内容に関連して特に申告なし 本記事のPDFをダウンロードいただけます
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