はじめに 病院や診療所を受診する2型糖尿病患者の7割が65歳以上とされる現在、高齢者糖尿病診療の質の向上は重要なテーマである。高齢糖尿病患者の診療機会が著しく増加している状況を受けて、日本糖尿病学会と日本老年医学会は合同委員会を設置し、2016年に高齢者糖尿病の血糖コントロール目標を発表した。患者の特徴・健康状態に基づく「カテゴリー分類」と、「重症低血糖が危惧される薬剤」の使用有無の組み合わせによってHbA1cの目標値を個別に設定するコンセプトは、高齢者における薬物療法の効果や安全性が薬物の種類のみで決定されるのでなく、若年者以上にさまざまな要因による複合的な影響を受けることを反映している。
1.2型糖尿病と肥満の現状 日本における「国民健康・栄養調査 2019年」によると、HbA1c 6.5%以上または糖尿病の治療を受けていると答えた、「糖尿病が強く疑われる」人の割合は、男性 19.7%、女性 10.8%であった。前年度に比べ、男性で1.0ポイント、女性で1.5ポイント上昇し、2009年以降で最も高い数値を示した。また、肥満に関しても、体格指数(body mass index:BMI)が25kg/m2以上の肥満の割合は、男性で33.0%、女性で22.3%に上り、男性では2013年から有意に増加している。特に男性では40代(39.7%)、50代(39.2%)、と働き盛りとされる中高年世代の40%近くが肥満となっている 1)。
はじめに 2型糖尿病は、インスリン抵抗性とインスリン分泌不全をその病態とする。一般に欧米人では前者が主体で、日本人を含むアジア人は両者が半々である 1)。病態に適した血糖降下薬を選択するのが理に適っているが、病態生理学には限界があることがあり、必ずしも理論・期待通りに糖尿病のアウトカムが改善するとは限らない。また、糖尿病は自覚症状が少ないので中断するケースが多く、最近では経済的理由で中断するケースが増加してきている現状 2)を鑑み、コストも無視できない 3)。 本稿では、糖尿病発症初期・糖尿病合併症のない場合を主体に、ビグアナイド薬(メトホルミン)を第一選択薬 4)として解説する。
Web版糖尿病・内分泌プラクティス(『糖尿病・内分泌プラクティスWeb』)の記念すべき劈頭を飾る特集として、今、まさしく百花繚乱ともいえる賑わいを見せている糖尿病の非インスリン療法に着目し、心置きなく縦横に企画を立案させていただいた。今回の特集では、糖尿病診療のいわば要石ともいえるこの領域を、絢爛無比な執筆陣によって多彩な観点から論考していただいている。まさに糖尿病診療の近未来を予見しうる企画となっているものと自負している。 本特集では、冒頭、能登 洋先生に、2型糖尿病において一般的に最初に勧められる薬剤をテーマに、2型糖尿病治療の現状から説き起こして主題へと肉薄し、結論を浮き彫りにしていただいた。次いで、加藤さやか先生と浅原哲子先生には、肥満を伴う糖尿病患者に対する薬剤の選択について、内外の知見を概観したうえで各薬剤の特徴について詳述していただいている。さらに、鈴木 亮先生には、高齢者糖尿病診療の注意点を高齢者の薬物動態の側面から論を進めつつ、各薬剤クラスの適応とシックデイにおける対応までへも敷衍していただいた。 後半では、まずは辻本哲郎先生に、心血管疾患のある2型糖尿病患者の治療法について、薬剤の作用機序とエビデンスの側面を中心に、要を得た解説を展開していただき、次いで、角谷佳則先生と繪本正憲先生には、腎機能低下時の薬剤選択について、腎保護作用を期待しうる積極的な方策を含めて、臨床の現場に則してご記載いただいている。最後に、藤井博之先生に、2型糖尿病における服薬アドヒアランスや、それを向上させる調剤手法なども含めて、薬剤師の立場から、日頃のご経験も踏まえて、糖尿病処方の問題点を具体的に描出していただいた。 本特集の執筆陣は、名実ともにその分野に専門性を有する方々であり、それぞれに糖尿病の経口血糖降下薬(非インスリン)療法に光を当てていただいた。ご執筆の先生方のご尽力を多とするとともに、有用な知識の提供されている今回の解説群により、読者諸賢の理解が一段と深まり、それによって得られたものを臨床の現場にフィードバックしていただければ、特集の企画者としてこのうえない喜びである。 著者のCOI (conflicts of interest)開示:本論文発表内容に関連して特に申告なし 本記事のPDFをダウンロードいただけます
はじめに インスリンは生体の糖代謝において、血糖降下作用や同化作用を持つ。膵ランゲルハンス島(膵島)の膵β細胞で合成され、分泌小胞に蓄えられたのちに血中へ分泌される。インスリンの分泌量は、短期的には日々の摂食に応じて変動し、血糖値(血漿グルコース濃度)の恒常性を保っている。より長期的には、肥満や妊娠をはじめとするインスリンが効きにくくなる状態で、分泌が慢性的に増強し、インスリン抵抗性を代償する。
1.ポイント ・糖尿病とがんには直接の相互関連性がある。・糖尿病では発がん・がん死のリスクが高まる。・一方、がん(特に膵臓がん)罹患に伴い糖尿病発症リスクも高まる。・がん患者が糖尿病を合併すると死亡リスクが高まる。・糖尿病を合併したがん患者の至適な血糖管理目標・治療法の確立が今後の課題である。
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