お誘いを受けて、梅雨の晴れ間のとある日曜日に、久しぶりの輪行そしてグループライドに参加した。cTDJ(cycling Team Diabetes Japan)による、およそ3年振りの企画である。cTDJとは、一見TDJ(Team Diabetes Japan)のサイクリング部門であるかのように思えるが、TDJの下部組織というわけではなく勝手に仲間内で名乗っているだけであり、したがって当然であるが公益社団法人日本糖尿病協会(日糖協)から公認を受けているわけではない。もちろん、日糖協へのチャリティーも行っていない。
はじめに 世界の多くの国において肥満者の割合は増加し続けており、本邦における20歳以上のBMI 25kg/m2 以上の肥満者の割合は、男性33.0%、女性22.3% 1)に達している。肥満は糖尿病や脂質異常症、高尿酸血症などの代謝性疾患のみならず、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、運動器疾患、月経異常といったさまざまな健康障害を引き起こす。日本肥満学会は、「肥満症」を「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする疾患」と定義し、「肥満症治療指針」では、食事、運動、行動療法を行ったうえで減量目標が未達成の場合、肥満症治療食の強化や薬物療法、外科療法の導入を考慮することを示している 2)。肥満症治療薬として、持続性GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬セマグルチド(商品名:ウゴービ皮下注)が、本邦において承認を得たが、2023年現在、複数の薬剤が開発中である(図1)。本稿では、開発中の肥満症治療薬の現状とその展望について解説する。
Q&A編はこちら はじめに 1型糖尿病ではインスリンを分泌する膵β細胞が壊されてしまうことによりインスリンが分泌されなくなる。したがって、インスリンを補いさえすれば、1型糖尿病のない人と変わらない生活を送ることができるといわれている。しかし、適切にインスリンを補うことが簡単ではない。一人一人の生活、活動、食事の好み、体調、ライフイベント、また経済的状況などに合わせて、十人十色の血糖管理の方法がある。一人一人にベストな方法を見つけて、1型糖尿病のない人と変わらない人生を目指して、患者さんと共に取り組みたいと考える。
はじめに インクレチンは、栄養素の経口摂取に伴い消化管の腸内分泌細胞から血中に分泌され、膵β細胞に作用し、インスリン分泌を増強するホルモンの総称である。グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1:GLP-1)は生体で主要なインクレチンであることが示され、GIPとGLP-1は血糖値が一定以上の際にのみインスリン分泌増強作用を示すことから、2型糖尿病の治療標的として注目され、2009年からGLP-1シグナルを増強する薬剤が2型糖尿病の治療薬として世界中で広く用いられている。本稿ではGIPとGLP-1の膵β細胞への作用、生理的作用、そして分泌の分子機構について触れ、代謝内分泌疾患との関連も述べたい。
はじめに “肥満症”とは、BMI≧25の“肥満”のうち、肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場合(内臓脂肪型肥満)で、医学的に減量を必要とする病態をいい、疾患単位として取り扱う(表1) 1)。また肥満症のうち、BMI≧35を高度肥満症とし明確に区別する。疾病側からみればその成因はさまざまであるが、肥満・内臓脂肪蓄積がその基盤にある病態とそうでないものを区別し合併症検索を行っていくとともに、肥満症では減量指導を第一に治療介入する意義を明確にすることが重要である。肥満症においては、食事・運動・行動療法を基本とした減量・内臓脂肪減少による健康障害の包括的な改善を目指すことを第一とするが、それらに抵抗性を示す主に高度肥満症例に対し、薬物治療や外科治療が考慮される。25≦BMI<35の肥満症の場合は、3~6カ月で現体重の3%以上の、BMI≧35の高度肥満症では現体重の5%以上の減量を目指す(図1) 1)。
三年以上にわたる新型コロナウイルス感染症との戦いも2023年5月に分類の5類移行に伴って、一つの区切りを迎え、今後、われわれは新型コロナ感染症と共存するニューノーマル時代を迎え、新たな医療の創造が求められている。このコロナのパンデミックの中でその重症化リスクとして肥満の危険性が明らかになり、コロナ以前からすでにパンデミックであった肥満の防止・治療の重要性が再認識された。 日本は世界に先駆けて肥満を病気として扱う肥満症という概念を提唱し、その治療に積極的に取り組んできたが、肥満をもたらす病態は複雑であり、基本治療である栄養・運動療法だけでは減量が困難な例も多い現状であったが、このような中、新たな肥満症治療薬の登場により、肥満症治療は急展開をしており、加えて、減量手術として始まった肥満外科治療(減量・代謝改善手術)は広く糖代謝を含めた代謝改善作用を認め、睡眠時無呼吸症候群、肥満関連がんの予防、NASH関連疾患などへの有用性も次々と明らかになっている。加えて、肥満症の治療に弊害となる肥満スティグマの問題や肥満患者に寄り添うための心理状態の理解も注目を集めており、これらの英知を集めた統合的な肥満症診療が今求められている。 本特集ではこれらの肥満症診療の進歩に焦点を当てて、薬物治療については臨床応用が進んでいるGLP-1受容体作動薬関連ペプチドについて、西澤 均先生・下村伊一郎先生に、さらに今後の肥満症治療薬の進歩・展開について廣田勇士先生に解説いただいた。また、肥満外科治療について最新の臨床応用を龍野が解説し、加えて、肥満外科治療として進歩の著しい内視鏡治療について伊藤 守先生・炭山和毅先生に解説いただいた。そして、最後に肥満症患者の心理状態と肥満スティグマについて野崎剛弘先生・澤本良子先生・小牧 元先生に解説いただいている。 本特集の執筆陣はこの分野に広範な経験と知識を有する専門家の方々であり、ご執筆の先生方のご尽力を多とするとともに、今回の特集によって読者諸賢の理解が深まり、それによって得られたものを臨床の現場にフィードバックしていただければ、企画者としてこのうえない喜びである。 著者のCOI (conflicts of interest)開示:小川 渉;講演料(住友ファーマ、アボットジャパン、日本ベーリンガーインゲルハイム、ノボ ノルディスク ファーマ)、研究費・助成金(住友ファーマ、帝人ファーマ、日本イーライリリー)、奨学(奨励)寄附(住友ファーマ、武田薬品工業、帝人ファーマ) 本記事のPDFをダウンロードいただけます
当サイトは、糖尿病・内分泌領域において医師・医療スタッフを対象に、臨床に直結した医療情報を提供する電子ジャーナルです。
該当する職種をクリックして中へお進みください。