ポイント NAFLD患者はわが国で2,000万人以上存在するといわれている。 NAFLD/NASHは肝硬変および肝がんに至る病態である。 NAFLD/NASHに対する薬物治療について多くの臨床試験が進行中である。 新たな概念として脂肪肝をSLDという形でまとめ、その下でのMASLD/MASHなどの新しい名称による疾患分類が提唱された。 MASLD/MASHは代謝、循環器など臓器横断的な疾患としての意味合いも包含している。
はじめに 家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は、LDL受容体関連遺伝子の変異を原因とする常染色体顕性遺伝疾患である。その臨床的特徴は高LDL-C血症、アキレス腱肥厚をはじめとする腱または皮膚結節性黄色腫、早発性冠動脈疾患の3つである。 高LDL-C血症患者を診察する際はFHを常に念頭に置く必要がある。本稿では、『成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022』を基にFH診断のコツ(行間・考え方)と積極的な脂質低下治療の重要性について概説する。また、1人のFH患者を診断した後には、家族スクリーニングを実施し、家族も早期に治療することが若年死の予防につながることを忘れてはならない。
この原稿が読者である先生方のお目に届くのはおそらく食欲の秋が到来した頃と思われるが、私どもが本原稿を執筆しているのは「土用の丑の日」を過ぎたばかりの酷暑真っ只中である。「土用の丑の日」というのは江戸時代の名コピーライター平賀源内翁による夏場のウナギ販促コピーであると伝えられているが、そのような事情を抜きにしても、滋養強壮に優れたウナギは実際に夏バテ対策として適した食品である。 さてウナギの栄養価を食品成分表で確認してみると、100g当たり炭水化物3.5gに対して脂質5.3g、そしてタンパク質13gと、高脂質高タンパクの食材である。すなわち、ウナギのような「滋養強壮に効く」食材は、脂質異常症と高尿酸血症を惹起しやすいのである(血中尿酸は食品内プリン体に由来するのが20~30%で、残りの70~80%はアミノ酸からのde novo経路を介した合成に由来する)。そしてウナギに限らず、われわれが美味しいと思うものをたくさん摂取することは、脂質異常症と高尿酸血症の発症に直結するわけである。 近代から現代にかけての食糧事情の改善は、われわれが欲する食料品へのアクセスを容易にし、それに伴い脂質異常症や高尿酸血症を含む生活習慣病はコモンディジーズとなった。ちなみに、かつて「成人病」と称されていた疾患群を「成人になることが病気を作るのではなく、われわれを取り巻く現代の生活習慣が病気を作るのだ」と喝破して「生活習慣病」と呼び換えたのは、昭和から平成にかけての医療界における名コピーライター日野原重明先生(元聖路加国際病院 院長)である。 今回の特集は、脂質異常症および高尿酸血症(尿酸異常症)に関して日常診療で直ちに役立つ内容とすべく、脂質異常症に関しては原が、高尿酸血症(尿酸異常症)に関しては寺脇が、現時点において最もお教えをいただきたい先生方に原稿のご執筆をお願いした。そして結果として、いずれも編者らの期待を大きく超えるすばらしい論文をご執筆いただき、脂質異常症・高尿酸血症(尿酸異常症)に関して大掴みできる一冊に仕上がった。今回の特集が平賀源内翁と日野原重明先生にちなみ、読者諸賢の「臨床現場での“滋養強壮に効く”」「診療の“習慣”が変わる」のに役立つことを、強く願う次第である。 著者のCOI (conflicts of interest)開示:原 眞純;講演料(興和、ノボ ノルディスク ファーマ、住友ファーマ、日本べーリンガーインゲルハイム、日本イーライリリー、第一三共、アステラス製薬)、寺脇博之;アドバイザー料(アプローズ)、講演料(協和キリン、持田製薬) 本記事のPDFをダウンロードいただけます
はじめに 2024年度診療報酬改定については、2023年12月20日予算大臣折衝を踏まえ、診療報酬の改定率は+0.88%(医科 +0.52%、歯科 +0.57%、調剤 +0.16%)となった 1)。そして2024年1月12日付けの厚生労働大臣諮問に対し、2月14日に中央社会保険医療協議会より改定案が答申された 2)。答申書では、賃上げ全般、医療DX(Digital Transformation)、働き方改革・人材確保など、28項目の附帯意見が記載され、これらの意見に従って個別項目が改定され、「診療報酬の算定方法の一部を改正する告示」は、6月1日からの適用となった 3)。 よって今回は、改定された医科点数表の、糖尿病に係る項目の告示、通知および施設基準について、表1に示す「個別改定項目」 4)に従って概説する。なお、本稿で示す各表では、新設・改定箇所を青字で記した。また次回では、内分泌疾患を中心に改定内容を概説し、DPC (Diagnosis Procedure Combination:包括評価)制度については、別途概説する。
はじめに わが国における65歳以上の高齢者の割合は2023年9月の推計で29.1%と世界で最も多く、80歳以上の人口も10.1%と10人に1人が80歳以上という超高齢社会のただなかにある。 こうした背景から日常の臨床でも、生活に見守りや支援が必要だと思われる例が増加している。高齢糖尿病患者を支えるサービスはさまざまあり、本稿では高齢糖尿病患者や介護者が特に必要とすると思われるサービスについて概説する。忙しい外来診療の中で全てを調整するのは非常に困難であるが、高齢糖尿病患者への支援の第一歩は、診療の中で意識して支援が必要な人や将来要介護となるリスクが高い人をスクリーニングし、速やかに地域包括支援センターなどにつなげることである。
「近代絵画の父」として知られるポール・セザンヌ(図)は、1839年1月19日、南フランスのプロヴァンスに生まれた。父のルイ=オーギュスト・セザンヌは、一介の行商人から銀行家まで成り上がった人物であった。彼は長男であり、妹が2人いた。1858年、セザンヌは父の勧めでエクス大学(現・エクス=マルセイユ大学)の法学部に進んだが、画家になる夢を諦めきれず、1861年についには父を説得し、月125フランの仕送りをもらいパリで絵画を学んだ。一旦は自分の才能の絶望し帰郷したものの、翌年パリに出戻り、画塾で学んだ。そこで、モネやルノワールと出会ったようである。その後1865年から1871年まではサロン(官展)に応募しては落選を続けた。彼がサロンに入選したのは1882年の一度きりであったが、1889年の万国博覧会に作品を展示したころには前衛的な若い芸術家や批評家たちの間でセザンヌに対する評価は高まっていった。1895年、画商ヴォラールによって開かれた初の個展は1868年ごろから1895年までにわたる約150点の油彩画でセザンヌの画業の集大成ともいわれる作品で、好評を得た 1~4)。
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