ポイント 男性性腺機能低下症は原発性(高ゴナドトロピン性)と続発性(低ゴナドトロピン性)がある。 器質的な異常のないLOH症候群が男性更年期障害として徐々に認知されつつある。 男性性腺機能低下症は臨床症状と血中総テストステロン低値から診断されることが多い。 テストステロン補充療法は男性性腺機能低下症に関連した性機能低下などの改善に有効である。 テストステロン補充療法に伴う前立腺癌や心血管疾患のリスク増加に関しては否定的な研究が多い。 日本ではテストステロン製剤は筋注製剤が中心であり、塗布製剤や貼付製剤などより安定した血中濃度が得られる薬剤の承認が求められている。
はじめに 糖尿病性腎症は、2011年に透析患者の主要原疾患の第一位となり、現在維持透析患者の約4割を占めるに至っている。さらに近年、典型的な糖尿病性腎症の臨床経過をたどらない症例を含めた糖尿病関連腎臓病(Diabetic Kidney Disease:DKD)という概念が提唱され話題を呼んでいる。糖尿病性腎症においては、腎症進行を抑制する目的でタンパク質の摂取制限が行われてきた。一方で社会の高齢化とともに、DKDを含む慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)患者におけるサルコペニア・フレイルが注目され、また進展したCKD・DKDでは特徴的な栄養障害であるprotein-energy wasting(PEW)も大きな問題となっている。従って、タンパク質摂取制限が望ましくない症例が増加している可能性がある。そのため、DKDの食事療法としては、腎機能と栄養状態の維持を両立させるためのプローチが求められている。本稿ではDKD進行予防のための食事療法やDKDにおける栄養障害、実際の食事療法の考え方について考える。
はじめに 薬物が生体に投与されると、その多くは小腸から吸収され、門脈を経て、肝臓を通過する。この過程で、薬物の一部は代謝される。その後、薬物は血流によって体内の各組織に分布し、標的分子に作用する。そして、尿中や胆汁中に排泄される。効果を発揮するために必要な作用部位における薬物濃度は、こうした薬物の体内動態により決定される。すなわち、副作用を抑え、十分な薬効を得るためには、薬物の体内動態を把握することが必要不可欠である。この過程は、吸収(absorption)、分布(distribution)、代謝(metabolism)、排泄(excretion)の頭文字をとってADMEと呼ばれる。本稿では、薬物の消失に関わる代謝および排泄について概説し、薬物の効果や薬物相互作用との関係について述べる。
はじめに 糖尿病を持つ方は、臨床的特徴、すなわち、病態、合併症の起こり方、治療反応性などが個々で異なるため、これらすべて考慮しながら、一人ひとりに最適な医療をすすめることが推奨される 1)。これを、糖尿病の個別化医療(personalized or individualized medicine)と呼ぶ 1)。糖尿病を持つ方の個別化医療を考える場合、合併症の病態と(発症と進展の)プロセスを明らかにすることが肝腎である。近年、糖尿病を持つ方の腎障害の多様性に注目が集まっている 2)。本稿では、糖尿病を持つ方の腎障害の多様性を、人工知能を用いた糖尿病分類という視点から考えてみたい。
はじめに 糖尿病の併存疾患の中で慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は主要なものの一つである。しかし、その腎障害を表現する名称に関してはDiabetic Nephropathy、Diabetic Kidney Disease、CKD with Diabetes、あるいはDiabetes and CKDなど呼称に関して世界的にもさまざまな混乱がある。同様の混乱は本邦でも認めていた。そこで、2024年より日本糖尿病学会、日本腎臓学会は米国を中心として世界で多く使われている「Diabetic Kidney Disease」に対応する日本語訳を「糖尿病関連腎臓病」とし、その概念を定義した。本稿では、糖尿病症例における腎臓合併症の歴史的背景を振り返るとともに、疾病概念の定義と定義が必要となった背景も概説する。
糖尿病における持続的な高血糖状態は、細胞内代謝異常や糸球体過剰濾過を引き起こし、糸球体障害を主な病変とする糖尿病性腎症を発症させる。そして、糖尿病性腎症では、糸球体障害に伴うアルブミン尿の増加が腎予後の悪化リスクとなることが明らかになっている。このため、厳格な血糖マネジメントやレニン・アンジオテンシン系阻害薬を用いた集学的治療によりアルブミン尿を予防・改善することが、糖尿病性腎症治療の最優先課題として確立された。その結果、現在ではわが国における糖尿病性腎症からの新規透析導入者数は減少に転じつつある。一方で、糖尿病治療の進歩に伴い、糖尿病患者の高齢化が進んでおり、その結果、アルブミン尿を伴わずに緩やかに腎機能が低下する症例が増加するなど、糖尿病患者が呈する腎障害の病態は多様化している。そこで、これら多様な病態を包括的に表現するため、「糖尿病関連腎臓病」という新たな概念が定義された。治療においては、従来の食事・運動療法を含む血糖・血圧の厳格なマネジメントを基本としつつ、Sodium-glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬、Glucagon-like peptide-1(GLP-1)受容体作動薬、非ステロイド型Mineralocorticoid receptor(nsMR)拮抗薬といった新しい薬剤の使用により、さらに腎予後を改善することが可能となっている。このように、高齢化や治療の進展が急速に進むわが国において、糖尿病関連腎臓病のさらなる予後改善を目指した診療の実践が求められている。そこで本特集では、糖尿病関連腎臓病研究および診療のエキスパートである金﨑啓造先生(島根大学)、島袋充生先生(福島県立医科大学)、森克仁先生(大阪公立大学)、川浪大治先生(福岡大学)、豊田雅夫先生(東海大学)、内田治仁先生(岡山大学)に、それぞれ糖尿病関連腎臓病の「定義と概念」、「病態の多様性」、「食事療法」、「薬物療法」、「多職種連携」、「地域連携」をテーマに解説いただいた。いずれも糖尿病関連腎臓病の理解を深め、明日の診療に役立つ内容となっている。本誌が皆様の糖尿病関連腎臓病診療のさらなる向上にお役立ていただければ幸いである。 著者のCOI (conflicts of interest)開示:繪本正憲;講演料(ノボ ノルディスク ファーマ、協和キリン)奨学(奨励)寄附(日本ベーリンガーインゲルハイム)、久米真司;講演料(日本ベーリンガーインゲルハイム、日本イーライリリー、協和キリン、アステラス製薬、アストラゼネカ、田辺三菱製薬)、研究費・助成金(日本ベーリンガーインゲルハイム)、奨学(奨励)寄附(日本ベーリンガーインゲルハイム、日本イーライリリー、住友ファーマ) 本論文のPDFをダウンロードいただけます
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