5.カーボカウント実践のコツ ―取っ掛かりを工夫する―
https://doi.org/10.57554/2025-0073
はじめに
血糖管理目標は従来HbA1cが指標とされており、日本糖尿病学会では合併症予防のための目標値はHbA1c 7.0%未満と定められており、65歳以上の高齢者糖尿病では認知機能や日常生活自立度、使用薬剤などによって個別に設定することが推奨されている 1)。また、強化インスリン療法における血糖マネジメントでは、低血糖を回避しつつ血糖マネジメントを行う必要があるため、HbA1cだけでなく、持続血糖測定(continuous glucose monitoring:CGM)を活用した血糖値の推移にも着目することが推奨されている 2)。血糖推移に着目した管理目標は、血糖値70~180mg/dLを治療域(Target Range)としてその範囲内である時間をTime in Range(TIR)と定義し、TIR 70%以上を目指すことが推奨されている 2)。近年、CGMやリアルタイムCGM機能付きインスリンポンプ(sensor-augmented insulin pump:SAP)の普及に伴い、カーボカウントの理解が血糖マネジメントに直結するようになった。本稿では、カーボカウントについて概説した上で、調理習慣のない患者や中食・外食中心の患者にカーボカウントを実践してもらうコツについて解説する。
1.カーボカウントとは
タンパク質、脂質、糖質の中で食後の血糖上昇に最も強く作用する栄養素は糖質である。カーボカウント(carbohydrate counting)とは、食後の血糖上昇に影響を及ぼす主な栄養素である糖質が食事中にどれだけ含まれているかを把握し、糖質量や追加インスリン量を調整することにより血糖マネジメントを行う食事療法である 3)。カーボカウントの実践は、HbA1cのみならずTIRの改善にも有用であるため、強化インスリン療法を実施している患者、とりわけ1型糖尿病患者に有用である。