糖尿病患者のやる気を高めるアプローチ

  • 坂根直樹 Sakane, Naoki
    国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室 室長
公開日:2025年10月2日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(5): 0076./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(5): 0076.
https://doi.org/10.57554/2025-0076

はじめに

 糖尿病は別名「自己管理の病気」と言われる。しかし、「持続血糖モニター(CGM)」など先進糖尿病デバイスを用いて血糖値を見える化し、ガイドラインや教科書通りの薬物治療を行っても、血糖管理がうまくいかず、患者のやる気は低下する 1)。この問題に対し、各職種がそれぞれの専門領域で対応する従来のアプローチだけでは限界があることが知られている。そこで、「糖尿病患者のやる気を高めるアプローチ」と題して、患者のやる気を引き出す多職種連携による分野融合的なアプローチ法について解説する。

1.「医学的なおどし」の限界

 従来の糖尿病療養指導では、「このままの高血糖を放っておくと大変なことになりますよ」といういわゆる「医学的なおどし」で危機感を強め、行動変容に向かわせるという指導がよく行われてきた。「保健信念モデル(Health Belief Model)」では、「今の血糖値では糖尿病が進行すると失明や末期腎不全のリスクがある」と感じる罹患性や「糖尿病が悪化すると、足の切断が必要となり、仕事に支障をきたす」とする重大度が高まると危機感が強まると、行動の利益と障害を天秤にかけ、利益のほうが上回れば行動変容の見込みが高まると考える(図1)。しかし、こういった危機感は長くは続かない 2)。その要因として、糖尿病の初期段階では目立った自覚症状がないこと、正常性バイアス(「自分は大丈夫」と思い込み、リスクを過小評価する心理)が働くこと、「合併症は他人事」と考える意識、さらに「慣れ」による感覚の鈍化(高血糖状態が続いても悪化していないと感じる)、心理的防衛機制(不安が強すぎると現実逃避する)、対処を後回しにする心理が挙げられる。ただ単に危機感を煽るより、ほかのアプローチ方法が今日、求められている。

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