認知症のある方への糖尿病療養支援
公開日:2025年4月4日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(2): 0025./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(2): 0025.
https://doi.org/10.57554/2025-0025
https://doi.org/10.57554/2025-0025
はじめに
近年、人口の高齢化に伴い、高齢の糖尿病患者は増えている。高齢の糖尿病患者は軽度認知障害や認知症が約1.5倍起こりやすくなる 1)。従って、認知症を伴った高齢者の糖尿病患者も増加している。認知症に至っていなくても認知機能障害があると、糖尿病のセルフケアの食事、運動、内服、注射などのアドヒアランスは低下し、セルフケアを肩代わりする介護者の負担は増加する。
本稿では認知症のある糖尿病患者の療養支援について解説する。
1.認知機能障害を疑う
まず、目の前の糖尿病患者の認知機能がどの程度か知る必要がある。認知機能の検査をする前に、可能ならば介護者の協力のもとに、認知機能障害を疑う手がかり(行動)があるかどうかをみる。
記憶障害は、約束を忘れたり、外来の受診日を間違えたりするかどうかである。次に手段的日常生活動作(ADL)である買い物、交通機関を使っての外出、金銭管理、服薬などの障害があるかを確認する。手段的ADL低下は記憶障害とともに、認知症の早期発見に重要な所見である。さらに、糖尿病の内服薬が余ったり、インスリン注射の打ち忘れのために血糖が上がったりする場合も注意する必要がある。心理状態の変化も重要で、意欲低下、うつ傾向があり、家に閉じこもっていることも手がかりとなる。また、フレイルやサルコペニアなどの身体機能が障害されている場合も軽度認知障害を合併しやすいので、認知機能をチェックしたほうがいい。