3.多発性内分泌腫瘍症(MEN)

  • 石川敏夫 Ishikawa, Toshio
    帝京大学医学部附属病院 内分泌代謝・糖尿病内科 教授
公開日:2025年7月24日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(4): 0052./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(4): 0052.
https://doi.org/10.57554/2025-0052

はじめに

 多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia:MEN)は複数の内分泌臓器に腫瘍を生じる疾患で1型(MEN1)と2型(MEN2)に大別される。両者とも有病率は3~4万人に1人程度と推定され 1)、常染色体顕性遺伝を示すが家族歴のないde novo変異による発症例も存在する。本稿ではこれらについて概説する。

1.MEN1 2)

1)病因

 11番染色体長腕(11q13.1)にあるMEN1遺伝子の機能喪失型変異による。MEN1遺伝子がコードするmeninが腫瘍形成促進因子JunDの働きを抑制することなどから、MEN1遺伝子はがん抑制遺伝子と考えられている。すなわち、片親から異常MEN1遺伝子を受け継ぎ、もう片親由来の正常MEN1遺伝子の機能が欠失などで失われると細胞が腫瘍化すると考えられる。

2)臨床像

 原発性副甲状腺機能亢進症・膵消化管神経内分泌腫瘍・下垂体前葉神経内分泌腫瘍を3主徴とする(表1 1, 3)。ほぼ全例で40~50歳までにまず原発性副甲状腺機能亢進症を発症するが、他主徴の先行例もあること、3主徴以外にも多くの内分泌組織に腫瘍を生じ得ること、膵消化管神経内分泌腫瘍の一部と胸腺神経内分泌腫瘍は悪性度が高いことなどに注意を要する。ホルモン非産生腫瘍としては、中枢神経系の髄膜種(MEN1の約8%にみられる)・上衣種(同約1%)、皮膚の顔面血管線維腫(同約85%)・コラゲノーマ(同約70%)・脂肪腫(同約30%)、さらに甲状腺腫瘍、乳癌、子宮筋腫などを合併する。なお、MEN1変異のタイプと臨床像や予後の関連を示す研究も存在するが、実臨床で役立つほどのものではない。

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