4.家族性高コレステロール血症

  • 斯波真理子 Shiba, Mariko
    大阪医科薬科大学 循環器センター 特務教授
公開日:2025年7月31日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(4): 0053./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(4): 0053.
https://doi.org/10.57554/2025-0053

はじめに

 家族性高コレステロール血症(FH)は、①高LDLコレステロール(LDL-C)血症、②早発性冠動脈疾患、③腱・皮膚黄色腫を3主徴とする常染色体遺伝性疾患である。FH患者では生下時から高LDL-C血症が持続し、若年時から冠動脈硬化症の進展を認めるため、FHは単独できわめて冠動脈疾患のリスクが高い疾患である。未治療のFHヘテロ接合体(HeFH)では、冠動脈疾患発症リスクが約13倍高いことが報告されている。
 日本人においても他国と同様300人に1人という高頻度でHeFHが存在し、30万人以上の患者がいると考えられる。早期診断により適切な治療につなげることで、FHは確実に予後を改善できる病気であることを念頭に診療にあたり、本人、さらには家族スクリーニング(カスケードスクリーニング)を実施することにより、若年死の予防が可能になる。

1.FHの病態

1)高LDL-C血症

 日本人HeFHの未治療時の平均LDL-Cは248mg/dLで、男女差は認めなかった 1)。HeFHの血清総コレステロール値は正常者の約2倍、FHホモ接合体(HoFH)は約4倍の値を示す。LDL-C値が高い場合、特に薬物治療への反応が悪い場合にはFHを疑うべきである。

2)早発性冠動脈疾患

 早発性冠動脈疾患患者は全てFHの可能性がある。高LDL-C血症があれば、FHの可能性が高い。急性冠症候群(ACS)の急性期にはLDL-C値が低下することが知られており、注意が必要である。

3)腱・皮膚黄色腫

 FHの診断において、腱黄色腫や皮膚黄色腫の存在が重要である。特にHoFHでは若年から黄色腫が顕著になるが、黄色腫がない場合でもFHを否定するべきではなく、遺伝学的検査が診断上重要な位置を占める。

4)角膜輪

 50歳未満のFH患者に見られる角膜輪は診断的価値が高いが、高齢者にも類似の症状が見られ、鑑別が必要である。

5)FHにおけるその他のリスク因子

 HeFHにおける冠動脈疾患のリスク因子として、糖尿病、低HDL-C血症、喫煙、高LDL-C、アキレス腱肥厚、高トリグリセライド(TG)血症などが挙げられる。また、高Lp(a)血症がリスク因子であることも報告されている。これらにより、動脈硬化のリスクを評価して、制御できるリスクをできる限り低下させることが重要である。

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