5.下垂体機能の評価:ホルモン基礎値の評価から内分泌負荷試験の実際と注意点
公開日:2025年12月11日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(6): 0088./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(6): 0088.
https://doi.org/10.57554/2025-0088
https://doi.org/10.57554/2025-0088
はじめに
内分泌系は、神経系、免疫系と共に生体の恒常性を維持する役割を担っている。下垂体は、その上位器官の視床下部と共に内分泌調節機構の中心である。下垂体は、副腎刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、ゴナドトロピン(黄体形成ホルモン〔LH〕、卵胞刺激ホルモン〔FSH〕)、成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)を産生・分泌する前葉(腺下垂体)と視床下部で産生されたバソプレシン、オキシトシンを分泌する後葉(神経下垂体)に分けられる。下垂体疾患を疑った場合、診断、治療方針決定に下垂体機能評価は必須である。本稿では、下垂体疾患を疑った場合のホルモン基礎値およびホルモン分泌能検査の基本、施行上の注意点を概説する。
1.下垂体ホルモン分泌障害を疑った場合の検査の進め方
下垂体はホルモン産生、分泌臓器であり、注意深い問診、診察により下垂体ホルモン分泌低下症、下垂体ホルモン分泌過剰症による症状、症候をとらえることが重要である。これらの症状、症候より疑われる下垂体ホルモンおよびその標的臓器ホルモン、バソプレシンの場合には血漿浸透圧(または血清Na)、尿浸透圧を測定する(表1)。ホルモン基礎値の明らかな異常が認められなくても、症候などより下垂体ホルモン分泌低下症が疑われる場合、ホルモン分泌刺激試験により下垂体ホルモン分泌能を評価する。逆に下垂体ホルモン分泌過剰症が疑われる場合、生理的な調節機構を逸脱しているかを評価するため、ホルモン分泌抑制試験を行う。これらにより異常下垂体ホルモンの種類とその分泌状態(低下、亢進)を明らかにすることができる(図1)。