3.肥満症・MASLD画像診断とIoTを用いた認知行動療法
https://doi.org/10.57554/2026-0004
はじめに
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease:MASLD)は世界人口の約1/4が罹患し 1)、その一部は代謝機能障害関連脂肪肝炎(Metabolic dysfunction-Associated Steatohepatitis:MASH)へと進展する。肝線維化の評価には侵襲的な肝生検が必要とされてきたが、約200万人と推定される本邦のMASH患者全員への実施は困難である。また、治療の基本となる7~10%の体重減少の達成・維持も容易ではない。
本稿では、非侵襲的評価法として確立されたFibroScan®による肝硬度・脂肪量測定の知見と、生活習慣改善支援の新たなアプローチであるIoT技術を活用したデジタル療法(Digital Therapeutics:DTx)の開発および臨床成績について述べる。
1.FibroScan®を用いた肝硬度指標
MASLDやMASHを含む慢性肝疾患の予後は線維化が重要な規定因子となり、肝細胞癌の発生にも大きく寄与している 2)。肝生検は、肝線維化を評価する上で最も信頼性の高い標準的手法として位置づけられているものの、患者への身体的負担が大きく、経時的な病態観察のための反復検査には適していない。さらに、採取部位による偏りや病理学的判定における観察者間の見解の相違といった問題も存在することから、線維化の程度を確認する目的のみで肝生検を施行することの妥当性については、なお検討すべき点が残されている。
最近では、患者への侵襲を伴わない肝線維化診断技術として、超音波エラストグラフィの原理を応用した各種の肝硬度計測装置が実用化されている。その中でもフィブロスキャン(FibroScan®)は最も早期に開発された機器であり、国際的に広く普及し、豊富な臨床データの蓄積を有している。近年、肥満者の割合が世界的に増加する中、慢性肝疾患の要因としてMASLDの重要性が急速に高まっている。人口の約1/4を占めると推定されMASLD患者全てに対して肝生検による危険度判定を行うことは現実的ではない。このような医療環境の変化を背景として、FibroScan®を用いた肝硬度評価の臨床的価値がますます注目されている。