(扉)特集にあたって
https://doi.org/10.57554/2026-0017
内分泌代謝・糖尿病領域の疾患は、その病態に基づいて全身に多彩な影響が出現することが大きな特徴である。それに伴い、症状や検査結果の異常においても臓器特異的ではなく、それらの背景にある内分泌代謝障害を理解しておくことが必要となる。また、内分泌代謝に関連する病態は、表面的な臨床課題への対症療法のみでは解決に至らず、時間の浪費と患者に対する不利益を生むばかりとなることを肝に銘じることが大切である。
今回の特集では、「見逃してはいけない内分泌代謝診療のピットフォール」の中から、救命のための治療の根幹にかかわるものから最近のトピックスまで、幅広く取り上げた。救急医療の現場で遭遇する意識障害、低血糖、電解質異常を呈する患者の中には、副腎不全を背景とするものが潜んでいる。副腎不全は、感染症などによる高度のストレスをトリガーとして生命の危機に至って受診をすることが多いが、事前に副腎不全と診断がついていないと、迅速な対応が困難な病態である。希釈性低ナトリウム血症や低血糖を認めることが、診断の手がかりになることが多い。また、わが国では副腎性よりも中枢性の副腎不全の患者が多いため、その他の下垂体前葉機能低下症に関連する所見、すなわち性腺機能低下症の身体所見や甲状腺機能低下症を反映する血清FT4低値などが手がかりになることもある。
超高齢社会の中で、骨粗鬆症はありふれた疾患として治療されているが、そこには思いもよらぬ問題が隠れていることがある。低ホスファターゼ症では、その残存酵素活性によっては、成人後、場合によっては高齢になって骨粗鬆症の治療を受けることで初めて問題となる場合があることが知られている。骨粗鬆症治療は、内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医にとっては重要な守備範囲であり、この問題への理解を深めることは大切であろう。
また、先端巨大症などの治療薬であるオクトレオチドでまれに認められる高度徐脈については、まさに専門医としての見識を示すべき臨床的問題である。さらに、日常診療において難渋することの多いスタチン不耐や、SGLT2阻害薬使用を背景とするケトーシスに関して、筋道だった解決策を会得しておくことも必須であろう。スタチンやSGLT2阻害薬は、今日、内科のさまざまな領域で広く標準薬として使用されているが、いざ問題が生じたときに頼りにされるのは内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医である。これらの薬剤について十分な理解が望まれよう。
今回の特集が、必ずや読者の皆様にとって必携のものとなるであろうことを、編者として確信するものである。
著者のCOI(conflicts of interest)開示:⽵内靖博;講演料(アレクシオンファーマ)