3.感染症とその治療による糖代謝への影響

  • 古谷賢人 Furuya, Kento
    名古屋市立大学大学院医学研究科 感染症学分野 助教
    伊東直哉 Itoh, Naoya
    名古屋市立大学大学院医学研究科 感染症学分野 主任教授
公開日:2026年5月28日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2026; 4(3): 0037./J Pract Diabetes Endocrinol. 2026; 4(3): 0037.
https://doi.org/10.57554/2026-0037

はじめに

 感染症と糖代謝の間には、互いの病態を増悪させ合う密接な「双方向性(bidirectional)」の関係が知られている 1)。古くから、糖尿病患者において感染症は死亡や病状悪化の主要な原因であることが知られてきたが、近年の研究、特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックを通じて、この相互関係の複雑さがより詳細に浮き彫りとなった 1, 2)。感染症による血糖変動の要因は、①感染症や微生物による直接的な影響と、②感染症治療に使用される薬剤による影響の2つに大別される 1~4)。これらが複合的に影響し合い、血糖変動をもたらす。本稿では、感染症が血糖を変動させる内分泌・代謝的機序に加え、抗菌薬やステロイドといった治療薬が及ぼす副次的な影響についても、多角的な視点から解説する。

1.感染症や微生物による直接的な影響

1)感染症に対する神経内分泌・代謝ストレス応答

(1)中枢を介したストレス認知と交感神経・HPA軸の活性化

 感染症は生体に大きなストレスを与える(図1)。ストレス応答は、主として交感神経系および視床下部-下垂体-副腎系(hypothalamic-pituitary-adrenal axis:HPA軸)によって制御されている 5)。低酸素血症、低血圧、炎症性サイトカインなどのストレスシグナルは、迷走神経求心路や脳幹、視床下部を介して中枢に伝達され、視床下部・辺縁系で統合される 5)。その結果、視床下部が活性化され、自律神経系を介して交感神経系が賦活される 5)

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