1.糖尿病に伴う感染症リスク

  • 荻原 熙 Ogihara, Hiro
    虎の門病院 臨床感染症科
    森 信好 Mori, Nobuyoshi
    聖路加国際病院 感染症科 管理医長
公開日:2026年5月7日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2026; 4(3): 0035./J Pract Diabetes Endocrinol. 2026; 4(3): 0035.
https://doi.org/10.57554/2026-0035

はじめに

 糖尿病は感染症の罹患および重症化の重要なリスク因子である。
 腎臓感染症、骨髄炎、足の感染症などでリスク上昇が顕著であり、感染種別によって増加の程度が異なる。その背景には、高血糖に伴う免疫応答の変調に加え、皮膚・尿路を中心とした局所環境の変化、血管・神経合併症による防御低下、さらには併存疾患や治療要因が重なることが挙げられる。
 本章ではこれらの疫学と機序を概説した上で、糖尿病で特に見逃しが予後に影響し得る気腫性感染症、糖尿病足感染症・壊死性筋膜炎、ムーコル症を中心に整理し、さらにSGLT2阻害薬使用時に注意すべき感染症についても述べる。

1.糖尿病が感染症リスクを上げる

 一般集団と比較して、糖尿病患者は感染症関連の入院リスクが2~4倍、外来診療における感染症リスクが1.5倍高いとされる 1)。英国の大規模マッチドコホート研究では、糖尿病患者は全ての感染症の発生率が高く、特に骨・関節感染症、敗血症、蜂窩織炎で増加が大きかった。同研究では感染症関連入院の発生率比(incidence rate ratio:IRR)が1型糖尿病で3.71、2型糖尿病で1.88と推定され、1型糖尿病で相対リスクがより高かった。また、感染症関連入院の約6%、感染症関連死亡の約12%が糖尿病に起因し得ると推定されている 2)。1型糖尿病に限定したマッチドコホート研究でも、外来で診断される感染症がIRR 1.81、感染症入院がIRR 3.37と推定される。さらに同研究では、平均HbA1cが低い群(≦約7.0%)と比較して、高い群(≧約11.0%)では感染症入院がIRR 4.09と推定され、血糖管理不良が重症感染リスクを増幅し得ることが示唆される 3)
 肺炎による入院は糖尿病で増加し、デンマークの症例対照研究では糖尿病全体で調整相対リスク(relative risk:RR)1.26、1型糖尿病でRR 4.43、2型糖尿病でRR 1.23が報告されている 4)。また感染種別にみると、感染症関連入院のリスクは腎臓感染症(3.0~4.9倍)、骨髄炎(4.4~15.7倍)、足の感染症(6.0~14.7倍)が顕著だが、肺炎、インフルエンザ、結核、皮膚感染症、手術部位感染症、全身性敗血症のリスクも高くなる 1)

このコンテンツは糖尿病・内分泌プラクティスWebをご購読後にお読みいただけます。

明日の臨床に役立つ時宜を捉えたテーマについて、内分泌代謝・糖尿病内科領域のエキスパートが解説。
毎週論文が更新され、いつでも “オンライン” で日常診療に役立つ情報をアップデートできます。

最新のアップデートに加え、これまでの掲載してきた100論文以上を読み放題です。
この機会に読みたかった論文に加え、気になる特集やセミナーを見つけてください。

■特 集(https://practice.dm-rg.net/main
内分泌代謝・糖尿病内科領域から押さえておきたい選りすぐりのテーマを、エキスパートが徹底解説。

■セミナー( https://practice.dm-rg.net/special
セミナー基礎医学から臨床に役立つ実践的な内容まで、多種多様なコーナーが学びをサポート。

■連 載(https://practice.dm-rg.net/series
独自の切り口と多彩な情報が満載、知的好奇心を刺激する連載。

糖尿病と感染症の危険な関係 ―連鎖を断ち切る新たな視点とは― 一覧へ 『4巻3号(2026年5・6月号)』(発行号ページ)へ

セミナー

連載