5.SGLT2阻害薬による正常血糖糖尿病ケト(アシド)ーシス
https://doi.org/10.57554/2026-0022
はじめに
SGLT2(sodium-glucose co-transporter 2;ナトリウム・グルコース共輸送体2)阻害薬は、新しい機序を持つ経口血糖降下薬として本邦では2014年に発売された。2014年4月に発売されたイプラグリフロジンを筆頭に、その後ダパグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジンなどが相次いで発売され、2025年11月時点では6成分が使用されている。当初は糖尿病治療薬として使用されていたが、一部の薬剤で慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)や慢性心不全に対する適応が追加された。今日では糖尿病内科のみならず、循環器内科、腎臓内科、一般内科など幅広い診療科から多くの患者に処方される薬剤となっている。
一方で、本剤は有害事象としてケトーシス、ケトアシドーシスが知られており、使用には注意を要する。古典的なケトアシドーシスとは異なり、血糖値が正常範囲、もしくは軽度高値にとどまる正常血糖糖尿病ケトアシドーシス(euglycemic diabetic ketoacidosis:euDKA)となることが多い。著しい高血糖を伴わないために発見しづらく、治療介入が遅れることが危惧される。本稿では、euDKA、ケトーシスの概要、早期発見、治療などについて概説する。
1.SGLT2阻害薬の作用の概要
本剤の血糖降下作用における主な機序は、腎臓のSGLT2を選択的に阻害することに加え、尿糖排泄を増加させることである。
近位尿細管には曲部にSGLT2が、直部にSGLT1が存在し、糸球体で濾過されたグルコースやナトリウムの再吸収に関与しており、そのうち90%程度をSGLT2が担っている 1)。SGLT2の阻害によりグルコースの再吸収が抑制され、尿中グルコース排泄量の増加、浸透圧利尿が起きる 2)。また、Na+/H+交換輸送体3(NHE3)の阻害によるNa+利尿作用や、遠位尿細管へのNa+到達量が増加して糸球体輸入細動脈の収縮による糸球体過剰濾過の是正といった作用もある 1)。さらにインスリン抵抗性改善など、多面的な作用が指摘されている 1)。
グルコース排泄量については、各薬剤のインタビューフォームによるとおおむね60~100g/日前後とされている。