糖尿病関連腎臓病の最新エビデンス
https://doi.org/10.57554/2026-0041
ポイント
- 糖尿病が病態に関与する慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)を糖尿病関連腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)と呼び、DKDの診断と早期介入は心腎アウトカム改善の観点から重要である。
- DKDの薬物療法について近年エビデンスが蓄積されてきた。
- 各種エビデンスを踏まえ、患者背景に応じて最適に使い分けることが今後の課題である。
1.総論
DKDは、わが国の末期腎不全の主たる原因疾患である。従来、糖尿病性腎症はアルブミン尿・蛋白尿の出現が先行し、約10年程度の経過を経て推算糸球体濾過量(eGFR)が低下することが典型的経過とされてきた。しかし近年、アルブミン尿・蛋白尿を伴わずにGFRが低下する非古典的な糖尿病性腎症が増加している。こうした多様な臨床経過をたどる症例を包括して、糖尿病が病態に関与しているCKDをDKDと呼ぶようになり、「糖尿病関連腎臓病」という訳語が当てられた。
DKDの病態としては、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性化、慢性炎症、線維化、異所性脂肪蓄積・脂肪毒性、動脈硬化、虚血・低酸素などが関与し、GFR低下および蛋白尿をきたすと考えられている 1)。
疫学的には、DKDは1998年以降、日本における新規透析導入患者の原疾患の第一位であり、2019年には新規透析導入患者の41.6%がDKDを原疾患としていた。日本におけるDKD合併率については、2型糖尿病受診者を対象としたJDDM研究の経年的調査で報告されている。2007年の8,897例の報告では、微量アルブミン尿を31.6%に認め、全体の43.8%がDKDに相当すると考えられた 2)。
DKDの診断意義として、尿アルブミン・クレアチニン比(UACR)とeGFRは腎予後のみならず、心血管イベントや死亡のリスク層別化にも有用である。ADVANCE studyの参加者データを用いた解析では、ベースラインのUACRとeGFRが互いに独立して、心血管イベント、心血管死、腎イベントを予測することが示されている 3)。UACRについては、10倍高いごとにこれら三者のリスクが段階的に上昇することが提示されている。さらに、Toyamaらは、糖尿病患者のコホート研究31本を統合し、微量・顕性アルブミン尿が心血管死、全死亡、腎イベントのリスク上昇と関連することを示している 4)。また、eGFR低下もリスク上昇に寄与し、アルブミン尿とeGFRは互いに独立したリスク因子であると結論づけている。
以上より、DKDは腎機能低下の進展を予測するだけでなく、心血管疾患や死亡リスクのマーカーとしても重要であり、DKDの診断と早期介入は心腎アウトカム改善の観点から重要であると考えられる。