(扉)特集にあたって
https://doi.org/10.57554/2026-0050
2025年、日本の高血圧診療の新たな指針となる『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』が発刊された。この新ガイドラインは、血圧の管理目標値の提示にとどまらず、高血圧診療を幅広く捉え、社会の中に根づくことができるように作成されている。そのガイドラインの発刊から1年が経過した今、臨床現場ではその理念をいかに実診療に落とし込み、個々の患者にとって最適な治療を構築するかが問われている。その中で、近年話題となっている心血管疾患、腎臓病、そして代謝異常が互いに深く関与し合う「心・腎・代謝連関」の視点も交えた高血圧診療の実践が求められるようになってきた。
本特集は、そうした観点からJSH2025の核心を深く理解し、日常診療の質をさらに高めることを目的に企画された。各領域の第一線で活躍するエキスパートの先生方に、ガイドラインの重要なエッセンスとともに、臨床現場で直面する課題への具体的なアプローチをわかりやすく、かつ深く解説していただいた。
本特集が想定する活用場面は多岐にわたる。例えば、生活習慣修正の指導において、従来の塩分制限に加え、スマートフォンアプリやウェアラブルデバイス、AIなどのデジタル技術をどう活用すべきかについて、本特集の解説がよい指針となることが期待される。また、運動処方の具体的な強度や安全管理、臨床現場での実践的な取り組みについても詳述されている。さらに、合併症を抱える患者への対応にも広く焦点を当てている。わが国で5人に1人が罹患している慢性腎臓病(CKD)患者へのレニン・アンジオテンシン系阻害薬の投与やカリウム管理、あるいは近年の新薬(SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬など)を用いた糖尿病・肥満を伴う高血圧治療など、最新のエビデンスに基づいた薬剤選択のポイントを掴むことができる。また、見逃されがちな二次性高血圧の早期診断や専門医への紹介のタイミング、2026年から開始された腎デナベーションを含む治療抵抗性高血圧への最新戦略、そしてがん治療の進歩に伴い注目を集める「Onco-Hypertension」への多職種連携など、本特集はまさに現代の臨床医が直面する「一歩踏み込んだ高血圧診療の悩み」に応える内容となっている。
日々の診療の傍らに、あるいはチーム医療における知識共有のツールとして、本特集がJSH2025の理念を臨床現場で具現化するための一助となれば幸いである。
著者のCOI(conflicts of interest)開示:柴田洋孝;講演料(第一三共、バイエル薬品、アストラゼネカ)、田中敦史;講演料(持田製薬、アムジェン、大塚製薬、ノボ ノルディスク ファーマ)、奨学(奨励)寄附(ブリストル マイヤーズ スクイブ)