4.糖尿病、肥満に伴う高血圧の管理
https://doi.org/10.57554/2026-0054
はじめに
近年、糖尿病、肥満、慢性腎臓病、心血管疾患は相互に密接に関連する病態として統合的に理解されるようになり、「心・腎・代謝症候群(cardiovascular-kidney-metabolic〔CKM〕syndrome)」という概念が提唱されている 1)。
このような背景から、近年ではこれらを個別に管理するのではなく、全身の代謝・循環動態の異常として統合的に捉える必要性が強調されている。特に、肥満を基盤としたインスリン抵抗性は2型糖尿病の発症に関与し、持続する高血糖は腎糸球体障害を惹起し、さらに腎機能低下は体液量増加やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の活性化を介して高血圧を増悪させる。このように、これらの疾患は悪循環を形成するため、その管理においては包括的かつ多面的な介入が不可欠であり、それらについて概説する 2, 3)。
1.糖尿病
糖尿病の診断は、慢性的な高血糖状態の存在を確認することにより行われる。具体的には、空腹時血糖値126mg/dL以上、随時血糖値200mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値200mg/dL以上、またはHbA1c 6.5%以上のいずれかを満たす場合に糖尿病と診断される。ただし、これらの所見は一過性の高血糖である可能性もあるため、原則として別日に再検査を行い、持続的な高血糖状態であることを確認する必要がある。なお、典型的な高血糖症状(口渇、多飲、多尿、体重減少など)を伴う場合や、明らかな高血糖が認められる場合には、1回の検査でも診断に至ることがある 4)(図1)。
糖尿病の評価は、単に血糖値の管理状況を把握するだけでなく、合併症の有無や進展度、さらには心血管リスクを含めた全身状態を総合的に評価することが重要である。
まず血糖管理の指標としてはHbA1cが用いられ、過去1〜2カ月の平均血糖を反映するため、治療効果の判定や長期管理において中心的な役割を果たす。また、持続グルコースモニタリング(CGM)を用いることで、血糖の日内変動や低血糖の有無を詳細に把握することができるようになった。
次に、慢性的な高血糖による合併症の評価が不可欠である。代表的なものとしては、網膜症、腎症、神経障害が挙げられ、それぞれ眼底検査、尿中アルブミン測定や推算糸球体濾過量(eGFR)、神経学的検査によって評価される。これらの合併症は早期には無症状で進行することが多いため、定期的なスクリーニングが重要である。
糖尿病の管理目標は、単に血糖値を正常化することにとどまらず、合併症の発症および進展を予防し、健康寿命を延伸することにある。その中心となる指標はHbA1cであり、一般的には7.0%未満が基本的な目標とされる。これは細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)の発症リスクを低減する水準として設定されている。一方で、若年者や罹病期間が短く、低血糖のリスクが低い症例では、より厳格な管理としてHbA1c 6.0%未満を目指すこともある。逆に、高齢者や重篤な合併症を有する症例、低血糖のリスクが高い場合には、安全性を優先しHbA1c 8.0%未満程度とするなど、個々の患者背景に応じた目標設定が重要である。
糖尿病を合併する高血圧の管理においては、その合併症である細小血管障害や大血管障害を予防し、改善するためにより積極的かつ包括的な血圧管理が求められる。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、このような高リスク背景を踏まえ、糖尿病合併例においては原則として診察室血圧130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)が目標とされている。血圧が140/90mmHg以上であれば、直ちに降圧薬を開始するが、130~139/80~89mmHgでは1カ月を超えない範囲で生活習慣の改善による降圧を試みてもよいとされており、早期に目標血圧へ到達し、それを持続的に維持することが推奨されている。
降圧薬の選択に関してはほかの病態と同様に、カルシウム(Ca)拮抗薬やレニン・アンジオテンシン系阻害薬(アンジオテンシン変換酵素〔ACE〕阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬〔ARB〕)、サイアザイド系利尿薬を選択することになるが、微量アルブミン尿(30mg/gCr以上)または蛋白尿(0.15g/gCr以上)の合併がある場合には個別に対応し、腎症の進行抑制を目的にレニン・アンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の投与を検討することとなる。必要に応じてCa拮抗薬や利尿薬を併用し、確実な降圧を図ることが求められる 5)。