ビタミンDって何?
https://doi.org/10.57554/2026-0062
はじめに
ビタミンD自体は栄養素である。皮膚で生合成、ないし食事中から摂取されたビタミンDは、体内で2段階の水酸化の過程を経て、活性型ビタミンDとなる。ビタミンDを理解する上で重要なのは、この活性型ビタミンDが体内において、ホルモンとして作用するという点である。活性型ビタミンDは、ビタミンD受容体(vitamin D receptor:VDR)に結合することでその作用を発揮する。主たる作用は、腸管からのカルシウム吸収を促進することであり、これにより骨の成長・石灰化を促す。活性型ビタミンDには、細胞の分化誘導作用もあり、破骨細胞を増加させて骨吸収を促進する作用もある。ホルモンとしての活性型ビタミンDは、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)や線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23:FGF23)とも相互作用する。
実臨床においては、ビタミンD欠乏がさまざまな病態と関連することが明らかとなっている。ビタミンD欠乏の病態でよく知られているのは、くる病・骨軟化症である。そもそもビタミンD欠乏性くる病という病態に対して、日光照射と肝油が有効であることが明らかとなり、肝油の中からくる病を治癒できる成分としてビタミンDが同定されたという歴史的背景がある。本邦では、長らくビタミンDの充足状態を評価できる血清25-水酸化ビタミンD[25(OH)D]濃度測定が保険未収載であったが、2016年より保険適用となった。本稿では、まずビタミンDの代謝の話題から入り、次いでビタミンD欠乏の病態から血中濃度測定の意義について解説した後、ビタミンD補充療法の実際について述べる。最後に、ビタミンD欠乏が関係する病態として、骨粗鬆症と原発性副甲状腺機能亢進症を取り上げる。
1.ビタミンDの代謝
栄養素としてのビタミンDが、体内でどのように代謝され、活性型ビタミンDとしてホルモン作用を発揮するようになるのかについて概説する。まず、ビタミンDには、側鎖の違いで植物由来のビタミンD2と動物由来のビタミンD3がある(図1)。ちなみに、ビタミンD2はきのこ類に多く存在するが、きのこは生物学的には菌類に分類されるため、植物由来というのは正確ではないかもしれない。一方、ビタミンD3は魚類に多く含まれる。ヒトにおいては、ビタミンD2もD3もほぼ同等の効果を示す。ビタミンD3については、食事中から摂取されるのみならず、ヒトでは皮膚で生合成される点も重要である。皮膚にはコレステロール生合成の最終中間体としてプロビタミンD3が存在し、紫外線(UV-B)の照射により、プレビタミンD3から最終的にビタミンD3が生合成される。
皮膚で生合成されたビタミンD3、および食事中から摂取したビタミンD(ここではD2、D3とも)は、肝臓においてCYP2R1あるいはCYP27A1によって25位が水酸化され、25(OH)Dとなる。さらに、25(OH)Dは腎臓においてCYP27B1によって1α位が水酸化され、活性型ビタミンDである1,25-水酸化ビタミンD[1,25(OH)2D]となる 1)。1,25(OH)2Dは、ビタミンDの異化代謝酵素であるCYP24A1を誘導し、24位が水酸化されると、1,24,25-水酸化ビタミンD[1,24,25(OH)3D]となり、自らを不活化し、最終的に胆汁中へ排泄される。この不活化酵素であるCYP24A1は、25(OH)Dも基質とするため、24,25-水酸化ビタミンD[24,25(OH)2D]として不活化される経路も存在する(図2)。
ビタミンDの生理作用のほとんどは、核内受容体として機能するVDRを介した1,25(OH)2Dの作用である 2)。一方、25(OH)Dは、活性型ビタミンDではないものの、PTHの産生・分泌調節作用や骨折・転倒予防作用、さらには心血管疾患および免疫系疾患との関係性が報告されている。これは、局所に存在するCYP27B1による局所でのビタミンDの活性化機構や、VDRを介さない25(OH)Dの作用機序が存在するものと考えられている 3)。