高カルシウム血症・低カルシウム血症への対応
https://doi.org/10.57554/2026-0027
はじめに
血清カルシウム(Ca)濃度は、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)と活性型ビタミンD(1α, 25-dihydroxyvitamin D:1,25〔OH〕2D)の2つのホルモンによって調節されている。血清Ca濃度が低下すると副甲状腺からPTHが分泌され、骨吸収の促進、腎遠位尿細管での1,25(OH)2Dとの協調作用によるCa再吸収の亢進、腎近位尿細管での1,25(OH)2D産生促進を介した腸管Ca吸収の亢進により血清Ca濃度を上昇させる。1,25(OH)2D産生の最も強力な因子はPTHであるが、低Ca血症などでも促進され、1,25(OH)2Dによるフィードバックも受ける。これらのホルモン作用が過剰になると高Ca血症を、不足すると低Ca血症をきたす。血清Ca値が急激に変動した場合は臨床症状を伴いやすいが、慢性的な変化では症状に乏しいことが多い。本稿では、症候性の高Ca血症と低Ca血症の症例に基づいて、初期対応と診断アプローチについて概説する。
1.症例:70歳女性
数日前から全身倦怠感と食思不振を訴えていた。意識混濁がみられたため救急搬送となった。頭部CTでは、意識障害の原因となり得る明らかな所見を認めなかった。身体所見では皮膚ツルゴールの低下を認めた。来院時の血液検査では、血清Ca 14.2mg/dL、血清アルブミン(Alb)3.6g/dL、尿素窒素(BUN)25.7mg/dL、クレアチニン(Cr)1.30mg/dL、推算糸球体濾過量(eGFR)29.9mL/min/1.73m2、尿酸(UA)9.0mg/dL、血清リン(P)4.3mg/dLであった。
1)高Ca血症に対する初期対応 1)
低アルブミン血症が存在する場合、血清Ca値は下記のように補正Ca値を算出して評価する。
補正Ca濃度(mg/dL)=血清Ca濃度(mg/dL)+(4-血清アルブミン濃度〔g/dL〕)
補正Ca 10.5mg/dL以上で高Ca血症と診断する。本例の補正Ca値は14.6mg/dLである。高Ca血症の判明時点では、すでに初期対応として細胞外液による点滴が開始されている状況と思われる。高Ca血症では、ほぼ例外なく著明な脱水を認めるため、速やかに輸液速度を速める。循環血漿量の回復と尿中Ca排泄の促進を図るため、細胞外液を少なくとも2~3L/日補液する。また、尿量が確保されていることを確認するため尿道カテーテル留置などを行い、尿量測定を速やかに開始する。大量補液への忍容性については、心臓超音波検査による心機能評価も併せて実施したい。
2)高Ca血症の臨床症状(図1)
高Ca血症の症状としては、全身倦怠感や食思不振・便秘、悪心・嘔吐、脱水、易疲労感などの非特異的なものが多い。しかし、本例のような高度の高Ca血症や血清Ca値が急速に上昇した場合は、傾眠や昏睡などの意識障害を呈することがある。また、脱水による腎前性腎機能障害はさらなる高Ca血症を助長することになる。尿路結石などの合併は慢性的な高Ca血症を示唆する。