フレイル・サルコペニアを認める糖尿病患者に対する療養支援
https://doi.org/10.57554/2026-0025
はじめに
糖尿病診療では「血糖を下げること」だけでは患者の生活は守れない。特にフレイル・サルコペニアを合併すると、転倒・骨折、入退院の反復、認知・抑うつ、服薬自己管理の破綻などが連鎖し、結果として血糖も不安定になりやすくなる。高齢糖尿病では、栄養・運動・薬物療法を“機能(歩く、立つ、外出する、買い物する)の回復”という共通目的に束ね、医師と医療スタッフが同じ地図を見ながら支援することが重要である。糖尿病管理を「代謝」と「機能」の二軸で捉え直すことが、多職種連携の出発点になる 1)。
1.フレイル・サルコペニアと糖尿病の関わり
フレイルは、加齢に伴う脆弱性が高まった状態で、代表的には①体重減少、②易疲労感、③筋力低下、④歩行速度低下、⑤身体活動量低下のうち3項目以上で定義される(Friedの表現型モデル) 2)。一方、サルコペニアは筋量および筋力の低下を伴う病態として整理され、アジアではAWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)の基準が臨床でよく用いられる 3)。
糖尿病がこれらを促進する背景には、(1)高血糖による筋蛋白分解・脱水・倦怠感、(2)インスリン抵抗性と慢性炎症、(3)合併症(神経障害、腎症、心不全、視力低下)による活動制限、(4)食欲低下や低栄養、(5)低血糖への恐怖による「動かない」選択、などが重なる。つまり、フレイル・サルコペニアは“血糖悪化の結果”であると同時に、“血糖悪化の原因”にもなる。ここを読み違えると、食事制限のみで対処して体重・筋力をさらに落とす、という悪循環に陥る。高齢糖尿病の診療では、機能評価と生活背景評価を定期的に組み込み、低栄養・サルコペニア・フレイルを治療ターゲットに含めるべきだ、という考え方が近年いっそう明確になっている 1)。