AKT阻害薬カピバセルチブ使用時の高血糖・糖尿病ケトアシドーシス発現についての注意喚起

  • 大橋 健 Ohashi, Ken
    国立がん研究センター中央病院 総合内科(糖尿病腫瘍科) 科長
公開日:2026年4月2日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2026; 4(2): 0032./J Pract Diabetes Endocrinol. 2026; 4(2): 0032.
https://doi.org/10.57554/2026-0032

はじめに

 カピバセルチブ(商品名:トルカプ®)は世界初の経口AKT阻害薬であり、わが国では乳がんに対して2024年3月に承認、同年5月から発売されている。AKT阻害により腫瘍細胞の増殖シグナルを遮断することで抗腫瘍効果を発揮する。一方、AKTはインスリンシグナル伝達経路の重要分子でもあるため、カピバセルチブによる“on target”な有害事象として高血糖や糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の発症が知られている。2024年11月に国内でDKAによる死亡例が報告されたことを受け、日本糖尿病学会では2025年4月15日付けで「AKT阻害薬カピバセルチブ使用時の高血糖・糖尿病ケトアシドーシス発現についての注意喚起」を発出した 1)

1.カピバセルチブの適応と作用機序

 カピバセルチブの適応症は「内分泌療法後に増悪したPIK3CAAKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌」である。閉経後ホルモン受容体陽性・HER2陰性の転移・再発乳癌に対しては、通常、内分泌療法としてアロマターゼ阻害薬とサイクリン依存性キナーゼ阻害薬(CDK4/6阻害薬)の併用療法が行われる。しかし、しばしば耐性を生じることがあり、その機序として腫瘍細胞の遺伝子変異によるPI3K-AKT-PTEN経路の活性化が知られている。カピバセルチブはAKT1/2/3の全てのアイソフォームを阻害し、本経路を抑制する。CAPItello-291試験において、カピバセルチブと選択的エストロゲン受容体抑制薬フルベストラントの併用療法は、フルベストラント単剤に対して病勢進行または死亡のリスクを50%低下させた(ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.38~0.65、p<0.001、無増悪生存期間中央値:7.3カ月 vs. 3.1カ月) 2)

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