女性の低体重/低栄養症候群(FUS)
https://doi.org/10.57554/2026-0033
はじめに
肥満が健康に及ぼす悪影響は広く認識されているが、「やせ」(低体重)が引き起こす健康問題については十分に認知されていない。特に、日本の若年女性におけるやせの割合は先進国の中でも突出して高く、深刻な健康課題となっている。本稿では、日本のやせの現状とそのリスク、さらに2025年に日本肥満学会が提唱した新たな疾患概念である女性の低体重/低栄養症候群(Female Underweight/Undernutrition Syndrome:FUS)について概説する。
1.日本のやせの現状とやせのリスク
令和5年の国民健康・栄養調査によると、20〜30歳代女性における低体重(BMI 18.5kg/m2未満)の割合は20.2%に達し、過去10年で最も高い水準となった 1)。経済協力開発機構(OECD)加盟国との比較においても、日本の成人女性のやせの割合は欧米諸国(約5%)や韓国(約8%)を大きく上回る(図1) 2)。この背景には「やせ=美しい」という価値観の浸透があり、普通体重の女性の過半数が自身を「太っている」と認識しダイエットを行っている実態がある。
低体重や低栄養状態は多様な健康障害と関連する。具体的には、低骨密度による将来の骨粗鬆症リスク、視床下部性無月経や希発月経などの月経異常、耐糖能異常、鉄欠乏性貧血、筋肉量低下などが挙げられる。われわれの研究では、やせた若年女性における耐糖能異常の発現率は標準体重女性の約7倍であり、米国の肥満者における発現率をも上回ることが明らかとなっている 3)。また、妊娠期における母体の低栄養は低出生体重児のリスクを高め、出生児の将来の糖尿病リスクにも影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、これらのリスクの認知率は決して高くなく、そのため強いやせ願望ややせ傾向が続いていると考えられる。近年、体重減少効果を有する糖尿病治療薬が、自由診療において標準体重の女性へ不適切に使用される事例が拡大しており、社会的な課題として懸念されている。