糖尿病性腎症重症化予防プログラム(令和6年度版)改定のポイント
公開日:2025年5月30日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(3): 0048./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(3): 0048.
https://doi.org/10.57554/2025-0048
https://doi.org/10.57554/2025-0048
はじめに
糖尿病性腎症の発症予防・重症化予防のためには、糖尿病や高血圧などの包括的な管理を行う必要があるが、糖尿病の治療継続者は7割以下である。このため国は平成28年(2016年)に糖尿病性腎症重症化予防プログラムを策定、現在では9割以上の市町村が取り組んでいる。令和6年(2024年)度にプログラム改定が行われた 1)ので、その要点について解説する。
1.糖尿病性腎症重症化予防プログラムと課題
「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」は、国民健康保険などの医療保険者が、健診・レセプトデータをもとに対象者を抽出し、受診勧奨・保健指導などを行うものである。国の実施要件として、①対象者の抽出基準が明確、②かかりつけ医と連携した取り組み、③保健指導には専門職が携わること、④事業評価の実施、⑤糖尿病対策推進会議などとの連携を図ること、の5項目がある。具体的な保健事業としては、糖尿病未治療者に対する受診勧奨、血糖コントロール不良者などに対する保健指導の2種類がある。
大規模実証事業による効果分析では、介入により医療機関受診が増加することが観察されたが、腎機能などのアウトカムの有意な差は認めなかった。その理由として、対象者抽出基準や介入方法などが標準化されていないこと、事業評価が不十分であることが挙げられる。そこで取り組みの標準化と質の向上に向けてプログラムが改定された。