第3回 こむら返りへの芍薬甘草湯

  • 吉田麻美 Yoshida, Mami
    藍野病院 副院長
公開日:2025年10月30日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(5): 0081./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(5): 0081.
https://doi.org/10.57554/2025-0081

はじめに

 有痛性筋痙攣、いわゆるこむら返りは、日常診療でもしばしば認められるが、糖尿病のある人では糖尿病のない人に比べて高頻度にみられ、生活の質(QOL)を低下させる症状のひとつである。特に、夜間に生じるこむら返りは睡眠障害の原因となり、日中の活動性低下や血糖コントロール増悪の悪循環を招くことが知られている。西洋医学的治療では、従来、筋痙攣に対して筋弛緩薬や抗痙攣薬(抗てんかん薬)が用いられてきたが、眠気などの副作用により使用が制限される場合も多い。一方、芍薬甘しゃくやくかんぞうとうは、その速効性と安全性から期待される薬剤である。

1.こむら返りの病態生理

 こむら返りは、疼痛を伴う突発する骨格筋の不随意な強直性収縮であり、通常数秒から数分続く。発生メカニズムは、神経軸索の不安定な脱分極による筋肉の異常収縮により起こるとされている 1)。健康な人でも運動の後や、発汗過多による脱水時や塩分喪失時など、また高齢者では就寝中にしばしばみられる。基礎疾患として、パーキンソン病および筋萎縮性側索硬化症などの神経疾患や末梢神経障害、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患、糖尿病、甲状腺機能低下症、副腎機能低下症などの内分泌疾患、さらに血液透析、肝硬変、電解質異常、熱痙攣などが挙げられる。
 糖尿病では、糖尿病性末梢神経障害による末梢神経の脱随や軸索変性により、筋収縮の調整機能障害が生じるだけでなく、低カルシウム血症や低マグネシウム血症などの電解質異常、脱水、虚血なども複合的に関与する 2)

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