第4回 更年期障害への加味逍遙散

  • 吉田麻美 Yoshida, Mami
    藍野病院 副院長
公開日:2025年12月11日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(6): 0096./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(6): 0096.
https://doi.org/10.57554/2025-0096

はじめに

 更年期障害は卵巣機能の低下に伴う多彩な症状を呈し、インスリン抵抗性増大や血糖値上昇をきたすなど、糖尿病や内分泌疾患とともに生きる女性にとって大きな負担となることが少なくない 1)。漢方治療は、個々の患者の「証」に基づき心身一如の対応が可能なため、ホルモン療法の適応外・不耐例や併用療法としても期待される。加味かみしょう遙散ようさんは婦人科三大処方として、現在最も多く処方されている漢方薬のひとつである 2)

1.更年期障害への対応

 更年期は、閉経前後5年の合計10年間とされ、この時期に現れる多種多様な症状のうち、器質的変化に起因しない症状を更年期症状と呼び、その中で日常生活に支障をきたす病態を更年期障害と定義する。更年期症状には、①顔のほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)・発汗などの血管運動神経症状、②易疲労感・めまい・動悸・頭痛・肩こり・腰痛・関節痛・足腰の冷えなどの身体症状、③不眠・イライラ・不安感・抑うつ気分などの精神症状がみられる。
 日本産科婦人科学会のガイドラインでは、更年期障害への対応として、①受容と共感による傾聴、②生活習慣の改善指導、③カウンセリングや認知行動療法などの心理療法、④ホットフラッシュ、発汗、不眠などが主な症状であればHRT(ホルモン療法)、⑤HRTでは、子宮摘出後はエストロゲン単独を、子宮がある場合はエストロゲンと黄体ホルモンを併用、⑥不定愁訴と呼ばれる多彩な症状を訴える場合には漢方療法などを用いる、と記載されている 3)

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