第4回 ONWARDS

  • 住谷 哲 Sumitani, Satoru
    大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 部長
公開日:2026年1月29日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2026; 4(1): 0014./J Pract Diabetes Endocrinol. 2026; 4(1): 0014.
https://doi.org/10.57554/2026-0014
今回の論文

Rosenstock J, Bain SC, et al. : Weekly Icodec versus Daily Glargine U100 in Type 2 Diabetes without Previous Insulin. N Engl J Med. 2023; 389(4): 297-308. [PubMed]

はじめに

 1921年にカナダ・トロント大学のBantingとBestがインスリンを発見してから100年余りが過ぎました。翌1922年には、インスリンを含むウシの膵臓抽出液が1型糖尿病患者であるLeonard Thompsonに投与され、劇的な血糖改善効果をもたらしました。同年に米国のイーライリリーが世界で初めてインスリンの製剤化に成功し、1923年にインスリン製剤「アイレチン®」が発売されました。また、北欧での製造許可を得たデンマークのノルディスク・インスリン研究所(現在のノボ ノルディスクの前身の一つ、以下ノボ社)から「インスリンレオ®」が発売されました。膵臓抽出物から精製されたこれらの初期製剤はレギュラーインスリン(regular insulin)と定義され、われわれが現在速効型インスリンR(regularの頭文字)と称しているインスリンです。
 速効型インスリンは作用時間が約6時間であり、血中有効濃度を維持するためには1日数回の注射が必要となります。そこで作用時間を延長するための技術開発が開始され、最初に世に出たのがNPH(neutral protamine Hagedorn)で、これは速効型インスリンにプロタミンを添加することで、作用時間の延長を可能としました。その後、遺伝子工学の導入に伴い、インスリンのアミノ酸配列の変更や側鎖の付加が可能となり、われわれが現在持効型インスリンと称しているグラルギン、デグルデクが登場しました。ノボ社のデグルデクは、インスリン分子に脂肪酸側鎖を付加することでアルブミンとの結合を増強し、これにより長時間にわたる有効血中濃度の維持が可能となりました。この技術は、同社のGLP-1受容体作動薬のリラグルチド、セマグルチドの開発にも応用されました。特にセマグルチドは週1回投与を可能としたものであり、この技術をインスリンに応用して週1回の投与を可能としたのが、今回の論文で検討されたインスリンイコデク(以下イコデク、商品名:アウィクリ®)です。イコデクの臨床開発プログラムはONWARDS 1~6まであり、それぞれ対象患者および対照薬が異なっています 1)。その中で、インスリン未使用の2型糖尿病患者を対象に、グラルギンU100(以下グラルギン)を対照薬として実施されたのが本試験ONWARDS 1です。

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