第2回 UKPDS91

  • 住谷 哲 Sumitani, Satoru
    大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 部長
公開日:2025年5月23日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(3): 0044./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(3): 0044.
https://doi.org/10.57554/2025-0044
今回の論文

Adler AI, Coleman RL, et al. : Post-trial monitoring of a randomised controlled trial of intensive glycaemic control in type 2 diabetes extended from 10 years to 24 years (UKPDS 91). Lancet. 2024; 404(10448): 145-155. [PubMed]

はじめに

 2型糖尿病治療のエビデンスはUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)を抜きにしては語れません。1977年から英国で開始されたUKPDSは、2型糖尿病治療における血糖管理の重要性を初めて明らかにしました。新たに診断された2型糖尿病患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)であるUKPDS33 1)とUKPDS34 2)の2つの論文は、読者の方々にも是非一読していただきたいと思います。
 UKPDS33では、10年間にわたり従来療法群(食事療法)とスルホニル尿素(SU)薬またはインスリン投与による厳格な血糖管理を目指した強化療法群とが比較されました。その結果、強化療法群では網膜症をはじめとした細小血管障害は有意に減少しましたが、心筋梗塞および総死亡の有意な減少は認められませんでした。一方で、過体重患者(標準体重の120%以上)を対象としたUKPDS34では、従来療法群とSU薬/インスリン投与による強化療法群に加えて、メトホルミン投与による強化療法群とが比較されました。その結果、メトホルミン投与群において細小血管障害の有意な減少は認めませんでしたが、心筋梗塞および総死亡の有意な減少を認めました。
 1977~1997年の20年間の介入試験の結果はUKPDS33および34として報告されましたが、試験終了時に生存していた患者は全て10年間のpost-trial monitoring studyに移行しました。その解析結果が2008年にUKPDS80 3)として報告されました。介入試験終了1年後には従来療法群および強化療法群のHbA1cはほぼ同一になりましたが、メトホルミン群における心筋梗塞および総死亡抑制効果はそのまま持続していました。さらにSU薬/インスリン投与群でも、心筋梗塞および総死亡の有意な減少が認められました。これが今ではよく知られている遺産効果(legacy effect)になります。そしてpost-trial monitoring study終了時に生存していた全ての患者がさらなる延長試験に移行し、UKPDS80報告14年後のフォローアップの解析結果が本論文として報告されました。

このコンテンツは糖尿病・内分泌プラクティスWebをご購読後にお読みいただけます。

明日の臨床に役立つ時宜を捉えたテーマについて、内分泌代謝・糖尿病内科領域のエキスパートが解説。
毎週論文が更新され、いつでも “オンライン” で日常診療に役立つ情報をアップデートできます。

最新のアップデートに加え、これまでの掲載してきた100論文以上を読み放題です。
この機会に読みたかった論文に加え、気になる特集やセミナーを見つけてください。

■特 集(https://practice.dm-rg.net/main
内分泌代謝・糖尿病内科領域から押さえておきたい選りすぐりのテーマを、エキスパートが徹底解説。

■セミナー( https://practice.dm-rg.net/special
セミナー基礎医学から臨床に役立つ実践的な内容まで、多種多様なコーナーが学びをサポート。

■連 載(https://practice.dm-rg.net/series
独自の切り口と多彩な情報が満載、知的好奇心を刺激する連載。

エビデンスの裏側 ―眼光紙背に徹す論文読解学― 一覧へ 『3巻3号(2025年5・6月号)』(発行号ページ)へ

セミナー

連載