アンドロゲンによる糖代謝制御と前立腺がんへのアンドロゲン抑制療法
公開日:2025年8月14日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(4): 0067./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(4): 0067.
https://doi.org/10.57554/2025-0067
https://doi.org/10.57554/2025-0067
はじめに
アンドロゲン(男性ホルモンの総称)は、性機能にとどまらず、さまざまな代謝調節機能を持ち、特に糖代謝やインスリン感受性に深く関与する。前立腺がん治療で広く用いられるアンドロゲン抑制療法は、副作用として糖代謝異常やメタボリックシンドロームの発症リスクの上昇が指摘されている。
1.アンドロゲンの糖代謝への影響
アンドロゲンが糖代謝に及ぼす影響は、男性性腺機能低下症患者を対象とした研究や、テストステロン補充療法の研究によって検討されている。アンドロゲンは、除脂肪体重を増加させ、体脂肪量を減少させ、インスリン感受性を高める作用を持つ。テストステロン補充療法は、これらの体組成の変化を通じて、インスリン抵抗性を改善し、糖代謝を改善する可能性が報告されている 1)。また、アンドロゲンには遊離脂肪酸を減少させ、炎症を抑制する作用もあり、これらもインスリン抵抗性の改善に関与すると考えられている 2)。さらに、アンドロゲンは骨格筋、肝臓、脂肪組織におけるグルコースの取り込みやインスリンシグナル伝達を直接的に調節することが明らかとなっている 2)。アンドロゲンの糖代謝への影響は、多様な要因が関与し、複数のメカニズムが関わる複雑なものである。