6.下垂体機能低下症におけるホルモン補充療法

  • 中野靖浩 Nakano, Yasuhiro
    岡山大学学術研究院医歯薬学域 総合内科学 講師
    大塚文男 Otsuka, Fumio
    岡山大学学術研究院医歯薬学域 総合内科学 教授
公開日:2025年12月18日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(6): 0089./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(6): 0089.
https://doi.org/10.57554/2025-0089

はじめに

 下垂体機能低下症は、視床下部や下垂体の障害により、下垂体前葉あるいは後葉ホルモンの分泌が低下する疾患である。原因には、腫瘍、炎症、自己免疫、感染、血管障害などの器質性疾患や外傷、周産期異常、手術、放射線治療、薬剤、先天異常などがあり、単一ホルモンの欠乏から全てのホルモンの欠乏まで多様な病態を呈する。ホルモンが欠乏した状態が続くと、生命予後の悪化や生活の質(QOL)低下につながるため、病態に即した適切なホルモン補充療法を行うことが必要である。本稿では、下垂体機能低下症のホルモン補充療法に関する国内外のガイドライン 1, 2)を参考に各病態の一般的な補充療法(表1)を概説し、小児から成人へのトランジション、シックデイ対応、自己注射・服薬指導などの患者指導のポイントについても触れる。

表1 下垂体機能低下症の各疾患と補充方法の一例(日本内分泌学会: 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日本内分泌学会雑誌. 2023; 99(S.July): 1-171を基に筆者作成)
表1 下垂体機能低下症の各疾患と補充方法の一例(日本内分泌学会: 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日本内分泌学会雑誌. 2023; 99(S.July): 1-171をもとに作成)
※ゴナドトロピン分泌低下症(女性)に対するホルモン補充療法は、主に産婦人科で行われるため省略する。実際に投与する際は、添付文書を参照すること。

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1.副腎皮質刺激ホルモン分泌低下症

 副腎皮質ホルモンによる補充療法を行う。通常、体内で産生されるコルチゾールと同じ構造をもつヒドロコルチゾンを経口投与するが、状況に応じてほかのグルココルチコイドが使用されることもある。投与量は体重などを考慮して決定し、1日投与量の2/3を朝、1/3を夕に投与する(例:コートリル®〔ヒドロコルチゾン〕15mg/日の場合、朝10mg、夕5mg)。血中副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropin:ACTH)値は治療効果の指標にならないため、倦怠感などの自覚症状や血圧、電解質などの所見をもとに、過不足のないように用量を調節する 1, 2)。併用薬にも注意が必要で、コルチゾールは肝臓でCYP3A4による代謝を受けるため、CYP3A4を誘導する薬剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン、トピラマートなど)との併用時は補充量を増量し、反対にCYP3A4を阻害する薬剤(リトナビルなど)との併用時は減量を検討する 3)。補充療法中に中心性肥満などのクッシング徴候が出現した場合は、医原性クッシング症候群の可能性を疑い、副腎皮質ホルモンの補充開始後に多尿が出現した場合は、中枢性尿崩症(仮面尿崩症:masked DI)の合併を疑い、精査する。

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