膵臓・膵島の解剖学

  • 西村 渉 Nishimura, Wataru
    自治医科大学 大学院医学研究科構造解析学 教授
    周 如贇 Zhou, Ruyun
    自治医科大学 医学部医学科 講師
    望月信弥 Mochizuki, Shinya
    自治医科大学 医学部医学科 助教
公開日:2026年1月15日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2026; 4(1): 0008./J Pract Diabetes Endocrinol. 2026; 4(1): 0008.
https://doi.org/10.57554/2026-0008

はじめに

 膵臓は、外分泌と内分泌の両方の機能を併せ持つユニークな臓器である。膵液を産生する外分泌腺としての機能は消化管生理に直結し、膵ランゲルハンス島(膵島)を主体とする内分泌機能は糖代謝の調節に不可欠である。すなわち膵臓の構造と機能は、栄養恒常性の調節を介して、消化器疾患と内分泌代謝疾患の病態に関与する。糖尿病診療に携わる上で、膵臓や膵島の構造と機能、そして病態を正しく把握することは、治療戦略を考える上での基盤となる。本稿ではまず、膵臓のマクロ解剖を概観した後、膵島における内分泌細胞の構成、脈管構造と血流、神経支配などの微細構造について解説する。さらに膵炎や膵切除後に認められる内分泌障害、臨床画像における解剖学的ランドマークについても触れることで、日常臨床に活かせる基礎知識を整理したい。

1.膵臓のマクロ解剖

 膵臓は、第1〜2腰椎の高さの後腹膜腔に位置し、成人では全長約13~25cm(平均16cm)、重量約60~170g(平均100g)の臓器である 1)。解剖学的には、膵頭部・膵体部・膵尾部に区分される(図1)。膵頭部は、C状に弯曲する十二指腸に囲まれ、一部が左下方に伸びて鈎状突起を形成する。膵尾部は脾門に達する。腹側は網嚢を隔てて胃後壁と接し、背側には腹大動脈や下大静脈、門脈や上腸間膜動静脈などの主要血管が走行する。膵臓の外分泌機能は腺房細胞によって担われ、消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌する。腺房細胞は小さな導管の末端に位置し、それらは導管系に連結され、主膵管(Wirsung管)に合流する。主膵管は膵全体を貫き膵液を集め、膵頭部で総胆管と合流し、大十二指腸乳頭(Vater乳頭)へ開口する。膵液と胆汁の十二指腸への流出は、総胆管と膵管の合流部を輪状に取り囲むOddi括約筋により調節されている。一方副膵管(Santorini管)は、典型的には膵頭部で主膵管より分枝し、小十二指腸乳頭へ開口するが、不明瞭なこともある。
 膵臓には腹腔動脈と上腸間膜動脈の両方から血流が供給されるが、その血管支配は部位により異なる(図2)。膵頭部は上・下膵十二指腸動脈、膵体尾部は脾動脈の分枝である後膵動脈(背側膵動脈)、大膵動脈、膵尾動脈などから動脈血が供給される 2)。静脈血は門脈系に還流し、内分泌ホルモンが直接肝臓へ到達する点は、代謝調節上合理的である。
 胎生期に膵臓は、内胚葉上皮に背側と腹側の2つに分かれて膵芽として発生する。上皮の成長は、それを取り囲む間葉性中胚葉との緊密な相互作用に依存している。その後、胃の回転に伴い、腹側膵芽が背側膵芽の後方に位置し、両者の実質と導管系が癒合して膵臓を形成する。つまり、背側膵芽が膵臓の大部分(膵頭の一部と膵体・膵尾部)を形成し、ここには腹腔動脈より血流が供給される。一方腹側膵芽は鈎状突起と膵頭の下部を形成し、ここには主に、上腸間膜動脈より下膵十二指腸動脈を経て血液が供給される。主膵管は背側膵管の遠位部と全腹側膵管で形成され、副膵管は背側膵管の近位部で形成される。発生過程で、内分泌細胞と外分泌細胞はともに膵臓の内胚葉性上皮に由来し、周囲の間葉と相互作用しながら分化する。

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