3.ソマトスタチン誘導体と高度徐脈
https://doi.org/10.57554/2026-0020
はじめに
ソマトスタチン誘導体は先端巨大症、クッシング病、消化管ホルモン産生腫瘍など種々の腫瘍性疾患の薬物療法に用いられている。現在、わが国ではオクトレオチド、ランレオチド、パシレオチドの3種類のソマトスタチン誘導体製剤が承認されている。まれではあるが、本剤では有害事象として高度徐脈が生じることが知られている。本稿ではその頻度、徐脈が誘発されるメカニズム、臨床現場での対応法などについて概説する。
1.ソマトスタチンとその受容体
ソマトスタチンは視床下部、膵臓のランゲルハンス島D細胞、消化管などから分泌され、成長ホルモン(Growth Hormone:GH)、甲状腺刺激ホルモン(Thyroid Stimulating Hormone:TSH)のほか、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンなどの消化管ホルモンの分泌を抑制する作用がある 1)。ソマトスタチンは環状のペプチドホルモンであり、1970年代にウシの視床下部抽出物からまず14個のアミノ酸よりなるSST-14が単離され、その後、28個のアミノ酸からなるSST-28も同定された 2)。SST-28はSST-14のN端にさらに14個のアミノ酸鎖を延長した形態をとっている。ヒトのソマトスタチン遺伝子はひとつしかなく、これらSST-14, 28はいずれも単一遺伝子に由来するプロソマトスタチンから切り出されて生成される。
ソマトスタチン受容体には、SSTR 1からSSTR 5までの5種類のサブタイプがある(表1) 3, 4)。これらはいずれもGタンパク質共役型受容体(G-protein-coupled receptor)に属し、それぞれ異なる染色体上の遺伝子によってコードされている。ソマトスタチン受容体は全身に広く分布しており、前述した種々のホルモンの分泌抑制のみでなく、消化管では腸管運動や胆のう収縮の抑制、外分泌機能の抑制にもかかわっている。ヒトの内分泌組織においてはSSTR 2, 5が優位に発現している。