第6回 VESALIUS-CV

  • 住谷 哲 Sumitani, Satoru
    大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 部長
公開日:2026年9月10日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2026; 4(5): 0079./J Pract Diabetes Endocrinol. 2026; 4(5): 0079.
https://doi.org/10.57554/2026-0079
今回の論文

Bohula EA, Marston NA, et al. : Evolocumab in Patients without a Previous Myocardial Infarction or Stroke. N Engl J Med. 2026; 394(2): 117-127. [PubMed]

はじめに

 本試験の正式な名称は「Effect of Evolocumab in Patients at High Cardiovascular Risk without Prior Myocardial Infarction or Stroke」ですが、略して「VESALIUS-CV」となっています。大規模臨床試験にはしゃれた名前をつけるのが恒例ですので、本試験も著者らが頭をひねってつけたと思われます。試験名にあるアンドレアス ヴェサリウス(Andreas Vesalius)は16世紀のブリュッセルの医師で、『人体の構造について(De humani corporis fabrica)』を著して近代解剖学の祖とされる人物です。その書の中で彼が詳細に血管系の解剖を記載したことが、その後のウィリアム ハーベイ(William Harvey)の血液循環説につながり、近代生理学が誕生しました。後述するように本試験の患者選択に際しては血管系の解剖(vascular anatomy)がかなり重視されているので、それでVesaliusが選ばれたのではと推測します。
 エボロクマブは、わが国では商品名レパーサ®として販売されているPCSK9(proprotein convertase subtilisin-kexin type 9)阻害薬です。強力なLDL-C低下作用を持ち、家族性高コレステロール血症やスタチンで十分な効果が得られない患者に対して投与されています。これまで心血管イベントの既往を有する2次予防患者を対象に実施されたFOURIER試験において、エボロクマブの投与により心血管イベントの再発を有意に抑制することが示されています 1)。しかし、心血管イベントの既往を有さない一次予防患者に対する有効性は明らかではありませんでした。この点を解明するために行われたのが本試験です。

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