インスリンポンプの最新エビデンス
https://doi.org/10.57554/2025-0059
ポイント
- リアルタイムCGMを併用したインスリンポンプ療法のことを、Sensor Augmented Pump(SAP)と呼び、さらにCGMと連動し自動で基礎インスリンを増減する注入方法を、Automated Insulin Delivery(AID)と呼ぶ。
- AIDの中で、手動によりボーラスインスリンを投与可能なものがHybrid Closed Loop(HCL)療法とされる。
- HCLに、追加インスリンによる自動補正を加えたものをAdvanced Hybrid Closed Loop(AHCL)と呼び、メドトロニック社のMiniMedTM780G Systemと、Tandem社のt:slim X2TM insulin pump with Control-IQ+ technologyが該当する。
1.総論
持続皮下インスリン注入療法(continuous subcutaneous insulin infusion:CSII、通称:インスリンポンプ療法)はデバイスやシステムの進化が血糖コントロールの改善に直結するといっても過言ではなく、現代の治療法の理解のために、まず現在までの開発の歴史を示す(図1) 1)。1976年に遡るが、インスリンポンプとして市販された最初のデバイスは、ベッドサイド据置型の大型のものであった 2)。そして持続血糖モニター(continuous glucose monitoring:CGM)が米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)に初めて承認されたのは1999年で、2015年にメドトロニック社のMiniMedTM640G SystemがCGMによる低血糖発生時の自動注入停止(predictive low glucose suspend:PLGS)を備えた初めてのモデルで発売となり、ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)でも低血糖の発生を抑制している 3)。
HCLのAIDとして初めて市販されたのは2016年で、メドトロニック社のMiniMedTM670G Systemであるが、日本では発売されていなかったが、その後Bluetooth機能を追加で有したMiniMedTM770G Systemが世界に遅れること2022年に導入となった。
そしてさらにMiniMedTM780G Systemのモデルから追加インスリンによる自動補正も加わったAHCLとして呼称されるAIDとなり、2023年に世界で使用できるようになっている。また、MiniMedTM770G SystemからMiniMedTM780G Systemへのアップデートは追加インスリンによる自動補正だけでなく、オートモードの目標血糖値が120mg/dLに加えて、110mg/dLや100mg/dLとより低い値が選択できるようにもなっている。その他、ガーディアンTM4センサーのキャリブレーションも必要としなくなったことで、実際に使用する患者側の負担も大きく軽減された。MiniMedTMでのHCLとAHCLによる12週間の治療期間のRCTでは、AHCL群で低血糖を増やさず高血糖を抑制している 4)。
本稿ではAHCLのAIDに関する有効性のエビデンスを解説し、MiniMedTM780G System使用の実例や今後期待されるインスリンポンプの未来を紹介する。