テストステロン補充療法の最新のエビデンス
公開日:2025年3月26日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(2): 0024./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(2): 0024.
https://doi.org/10.57554/2025-0024
https://doi.org/10.57554/2025-0024
ポイント
- 男性性腺機能低下症は原発性(高ゴナドトロピン性)と続発性(低ゴナドトロピン性)がある。
- 器質的な異常のないLOH症候群が男性更年期障害として徐々に認知されつつある。
- 男性性腺機能低下症は臨床症状と血中総テストステロン低値から診断されることが多い。
- テストステロン補充療法は男性性腺機能低下症に関連した性機能低下などの改善に有効である。
- テストステロン補充療法に伴う前立腺癌や心血管疾患のリスク増加に関しては否定的な研究が多い。
- 日本ではテストステロン製剤は筋注製剤が中心であり、塗布製剤や貼付製剤などより安定した血中濃度が得られる薬剤の承認が求められている。
1.総論:男性性腺機能低下症について
性腺は生殖や性ステロイドに関与する組織であり、男性は精巣、女性は卵巣が該当する。性腺から分泌される性ステロイドは、視床下部や下垂体からのホルモンの調節を受け、ネガティブフィードバック機構が存在する。男性性腺機能低下症は、男性の精巣にある内分泌機能や精子形成能のなどが障害された状態である。精巣そのものが障害された原発性と、精巣より上位が障害された続発性に分類される(表1)。続発性では精巣に作用する黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌が低下した低ゴナドトロピンであり、原発性では精巣からのテストステロンの産生や分泌低下が起き、ネガティブフィードバックが作用しないためにLH、FSHが増加した高ゴナドトロピンである。また、器質的異常のない加齢による血中テストステロンの低下とそれに伴う種々の症候を呈するものはlate-onset hypogonadism(LOH症候群)と呼ばれ、男性更年期障害として徐々に認知されつつある。
