4.糖尿病と歯周病の関連
https://doi.org/10.57554/2026-0038
はじめに
糖尿病と歯周病は、ともに慢性炎症を基盤とする疾患であり、相互に影響を及ぼすことが明らかとなっている。糖尿病は歯周病の発症および進行を促進する重要な危険因子である。歯周病は全身性炎症を介して血糖管理やインスリン抵抗性に影響を及ぼし得る。近年、疫学研究、介入研究、ならびにメタ解析により、両疾患の関連性は臨床的に確立された関係として、医療従事者はもちろん、患者、一般の人々にも認知されつつある。本稿では、日本糖尿病学会編『糖尿病診療ガイドライン2024』 1)を反映しつつ、最新のエビデンスを紹介・解説する。あわせて、糖尿病と歯周病の相互関連性について整理し、両疾患を管理する意義について解説する。
1.歯周病とは
歯周病は、歯の周囲に堆積したプラーク中の歯周病原細菌を主とした感染による炎症性疾患である。歯周病は日本人の中高年者において50%以上で罹患が認められ、抜歯の主要な原因となる口腔内疾患である。歯周治療では、患者自身のプラークコントロール(セルフケア)の確立に加え、歯周ポケット内のプラークや歯石を取り除く原因除去療法によって歯周組織の炎症の改善を図り、その後も再発防止のために定期的なメインテナンス(プロフェッショナルケア)が必要とされる。
歯周病に罹患すると、細菌性プラークに対する生体の反応としてインターロイキン(IL)-1やIL-6、腫瘍壊死因子(TNF)-αなどの炎症性サイトカインが産生され、歯槽骨吸収が生じるとともに、血行性に全身へと炎症が波及する。また、全ての歯が歯周ポケット7mm程度の重度歯周炎に罹患していると仮定すると、歯周ポケット内面に存在する微小潰瘍の面積の総和は55~72cm2となる。これは人間の手のひらほどの大きさであり、重度の歯周病患者はその範囲が持続的に炎症を起こしている状態と同じである。さらに、この微小潰瘍から口腔内細菌やリポ多糖(LPS)などの病原因子が体内に侵入し、菌血症を引き起こす。また、最近では口腔内細菌叢の変化が腸内細菌叢にも影響し、腸内細菌叢の変化を介した影響も考えられている(図1)。