5.糖尿病フットケアの実践のコツ
https://doi.org/10.57554/2026-0039
はじめに
糖尿病診療において感染症、特に足病変は、重症化や予後悪化に直結する重要な合併症であるが、日常診療では十分に注目されにくい部位のひとつである。神経障害や血流障害を背景に、小さな傷や皮膚トラブルが感染の入口となり、自覚されないまま進行することも少なくない。一方で、フットケアという言葉から、爪切りや胼胝処置といった専門的なケア技術を想起し、「忙しい内科外来では難しい」と感じている医療者も多い。しかし、足の感染症を防ぐために求められるのは、必ずしも特別な処置や高度な技術ではない。
本稿では、糖尿病と感染症の関係を「足」という視点から整理し、内科外来において実践できるフットケアの考え方と、足病変を見逃さないための視点について解説する。
1.なぜ今、糖尿病患者へのフットケアの「実践」が求められるのか
糖尿病診療において、血糖管理や合併症管理は年々進歩している。一方で、糖尿病足病変は今なお患者のQOLを著しく損ない、下肢切断や生命予後にも直結する重要な合併症である。しかも足病変の多くは、急激に発症するのではなく、気づかれないまま静かに進行し、発見された時にはすでに重症化していることが少なくない。
日常診療の現場では、「足は専門外」「時間がない」「どこまで診ればよいかわからない」といった理由から、足の評価が後回しにされがちである。しかし実際には、糖尿病足病変の多くは、内科外来でのちょっとした気づきや、早期の対応によって重症化を防ぐことが可能である。特殊な機器や高度な技術がなくても、「足を見る習慣」を持つだけで、患者の将来を大きく変えられる場面は少なくない。
フットケアというと、爪切りや胼胝処置などの“ケア技術”を思い浮かべる医療者も多い。しかし内科医に求められるフットケアの本質は、処置そのものではなく、リスクを見極め、異常に気づき、適切につなぐことにある。全てを内科医が完結させる必要はないが、多職種と連携しながら、チーム医療の起点として足を診る視点を持つことこそが重要である。