災害時の糖尿病チーム医療
https://doi.org/10.57554/2025-0009
はじめに
本邦では毎年のように、さまざまな場所で、さまざまな災害が発生している。糖尿病患者は大規模災害に被災した際には、糖尿病をもつ人として生きることよりも生き延びることが最優先され、特に食事・運動療法の継続が困難となり、血糖管理状況が悪化することが報告されている 1)。そのため、災害発生時に糖尿病患者が困らないように普段から指導や教育を行うことが重要であり、いざ災害が発生したら、可及的速やかに支援することが望まれる。そこで、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が協働して、糖尿病医療支援チーム(Diabetes Medical Assistance Team:DiaMAT)の体制構築を進めている。各都道府県に災害対応チームを設置すると同時に、インスリン依存状態の糖尿病患者の登録や情報発信、メディカルスタッフへの教育や登録などを準備している。今後、起こり得る大規模災害に医療者全員が自分事として捉え、まずわれわれ自身が準備をし、加えてわれわれが直接関わる患者も災害に対する準備をするように働きかけることが大事である。本稿では、糖尿病をもつ人たちが、災害発生時にできるだけ困らないようにするために、私たち医療者がチームとしてどのように関わるべきか、活動すべきか概説する。
1.DiaMATについて
DiaMATは、災害の事前準備のための医療者および患者への災害教育や災害発生時に、当該都道府県および地区の関係団体と連携して迅速な被災者支援を行うことにより、糖尿病に伴う災害関連死を防ぐことを目的に創設され、災害が起こる前の防災訓練から発災時の支援まで、トータルに糖尿病患者を災害から守るチームである。DiaMATを構成するのは、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会を中心に、各地域のそれぞれの支部とその関係者、そして日本糖尿病療養指導土(CDEJ)や地域糖尿病療養指導士(CDEL)の有資格者である 。
DiaMATの活動には、平時に行うものと災害発生時に行うものに分けられる(図1)。平時には、糖尿病患者や医療スタッフへの災害教育や、行政や医師会(日本医師会災害医療チーム:JMAT)との連携、患者登録システムの構築、治療薬や医療機器の備蓄などを行う。特に患者への災害教育は重要であり、患者に災害時における対応策を定期的に、かつ集団だけでなく個別化した形で教育を行うことが必要がある。
