糖尿病スティグマと医療者ができるアドボカシー活動 ―糖尿病患者に対する私たち医療者ができる当院の関わり
https://doi.org/10.57554/2024-0059
はじめに
スティグマとは、特定の属性に対して刻まれる「負の烙印」という意味を持ち、誤った知識や情報が拡散することにより、対象となった者が精神的・物理的に困難な状況に陥ることを指す 1)。糖尿病のある人に対する社会からの差別と偏見は、糖尿病のある人に社会的・経済的に不利益を与え、彼ら自身の社会的地位と自尊感情を著しく損なっている。この状況を糖尿病スティグマという 2)。
1.糖尿病患者の食事療法
糖尿病と診断されただけで、社会で自己管理ができていない人間というレッテルを貼られてしまい、糖尿病でない人からは下に見られ、医療者からも「自己管理ができていないから糖尿病になる」と言われることもある。また、食事療法においても「ごはんを食べてはいけない」「果物は糖分が多いから食べてはいけない」「誕生日でもショートケーキを1/4だけしか食べてはいけない」といった科学的根拠に基づかない食事制限をかける『指導』ばかり受けることも少なくない。しかし、食事療法は糖尿病治療の基本であり、血糖マネジメントや体重マネジメントに必要不可欠となるが、糖尿病のある人を含めた多くの人の背景は多種多様であり、個別化が重要となってきている 3, 4)。また、食事というものは炭水化物やタンパク質、脂質、ビタミン、微量元素といった栄養素のみで推し量れるものではなく、そこには食事をとる楽しみや家族との思い出など、栄養素をとる以上の意義があるものであるということを忘れてはいけない。糖尿病に罹患したために、食事を医療者側に決められる生活は間違っており、医療者自身も患者の気持ちに立ち患者の思いを尊重した関わりを持つことが必要である。