ステロイド薬の使い分けとステロイドカバー
https://doi.org/10.57554/2024-0029
はじめに
糖質コルチコイド(以下ステロイド)はどの分野においても診療の中で使用することの多い薬剤である。しかし、ステロイドには血中半減期・生物活性半減期・力価の異なるさまざまな製剤が存在することや、各疾患によって投与量や投与方法、減量速度などが異なること、副作用に注意しなければならないことなどから、煩雑だと感じる医師も少なくない。本稿では各種ステロイドの特徴とその使い分けについての基本事項と、内分泌領域での使用例、ステロイドカバーについて述べ、実際の症例を紹介する。
1.各種ステロイドの特徴
ステロイドには力価の異なる多くの製剤が存在する。以下の換算表(表1)を参考に投与量を考える。各ステロイド製剤1錠が大体ヒドロコルチゾン(コートリル®20mg)に相当し、健康成人の1日のコルチゾール分泌量とほぼ同等であると考えると覚えやすい 1)。コートリル®は半減期が短いため視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA axis)への機能抑制が起こりにくく、即効性があるため主に副腎皮質機能低下症のホルモン補充療法に使用される。プレドニゾロン(プレドニン®)は作用時間が比較的短く、電解質代謝への影響が弱いため、薬理作用を狙った各疾患のステロイド治療において第一選択薬としてよく用いられる。デキサメタゾン(デカドロン®)は鉱質コルチコイド作用がなく電解質代謝への影響は少ないが、半減期が長いためHPA axisへの機能抑制が強く、短期的に使用される場面が多い。
ステロイドには経口だけでなく、経静脈投与や、外用(塗布、点眼、点鼻など)、吸入、関節内投与など局所的にも使用される。経口ステロイドは吸収率が非常に高いが、注射製剤は水に難溶性でありリン酸やコハク酸でエステル化した製剤となっており、生体内で活性型となり効力を発揮するため、経口投与よりも生体内利用率が劣る可能性がある。そのため、経口投与から経静脈投与への切り替えの際は、最初は同量で開始し、その後反応性をみて増減する。また、連日投与する際も生体内利用率の低下を考慮し、臨床経過をみて投与量を調整する。

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