糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方
https://doi.org/10.57554/2024-0013
はじめに
慢性疾患を有する外来患者へのパーソナルヘルスレコード(personal health record: PHR)をはじめとしたデジタル技術の応用が、治療アドヒアランス、自己管理または自己効力感改善に有効であることが報告されてきている 1)。糖尿病治療においてもデジタル化の波が進んできており、間歇スキャン式持続グルコースモニタリング(intermittently scanned continuous glucose monitoring:isCGM)、コネクテッドインスリンデバイス、PHRを中心とした臨床応用が広がっている。 これら糖尿病関連デジタルデバイスを有効に用いることで、糖尿病治療に関連するさまざまな情報を統合し、治療にフィードバックすることが可能となる。本稿では糖尿病関連デジタルデバイスに関するキーデバイスとその実臨床での応用法、および現在までに得られているエビデンスを含め概説する。
1.間歇スキャン式持続グルコースモニタリング(isCGM)
isCGMであるFreeStyleリブレは、従来の持続グルコースモニタリングと異なり、指先採血による自己血糖測定(self-monitoring of blood glucose:SMBG)でのキャリブレーション作業が不要となっている。使用法が簡便なこと、令和4年度診療報酬改定に伴い、インスリン療法を行っているすべての糖尿病患者に適用となったことにより、その使用が広く拡大している。 FreeStyleリブレは上腕背側に500円玉大のセンサーを装着することにより、14日間、連続的に間質液中のグルコース値を毎分測定し、15分ごとに保存することで連続的に血糖をモニタリングすることを可能としている。FreeStyleリブレは間質液中のグルコース濃度を測定しているため、急速な血糖変動時には血糖値と5~10分程度のタイムラグが発生する可能性に注意を要する。グルコース値の確認はFreeStyleリブレReader、もしくはスマートフォンアプリのFreeStyleリブレLinkからでき、FreeStyleリブレLinkでは自動で測定結果がクラウド上にアップロードされ、医療機関とのデータ共有も可能となる(図1)。また、記録されたグルコース値を集約し、その傾向を視覚的に把握しやすくしてくれる解析方法である ambulatory glucose profile(AGP;図2)により、低血糖や高血糖となる可能性の高い時間帯や、血糖変動が大きい時間帯を容易に把握することを可能としている。近年、HbA1cとともに臨床で用いられる血糖コントロール指標としてtime in range(TIR)が用いられてきている 2)。治療域血糖値を70~180mg/dLとし、この血糖範囲を維持できた時間割合をTIR(%)と定義し、このTIR が70%以上の場合、HbA1c 7.0%未満を達成できる可能性が高いとされている。良好なTIRを維持することは糖尿病網膜症や糖尿病性腎症の進行抑制につながり 3)、逆にTIRの低下は、総死亡、心血管死リスクの増加につながることが報告されている 4)。isCGMの導入は従来のSMBGと比べ、1、2型糖尿病を問わず、インスリン加療中患者の低血糖発現時間を抑制し 5, 6)、非インスリン加療中の2型糖尿病患者においても、良好な血糖域維持時間(TIR)を増加させHbA1cも改善することが報告されている 7)。