1.全身倦怠感・易疲労感
公開日:2025年5月9日
糖尿病・内分泌プラクティスWeb. 2025; 3(3): 0032./J Pract Diabetes Endocrinol. 2025; 3(3): 0032.
https://doi.org/10.57554/2025-0032
https://doi.org/10.57554/2025-0032
はじめに
日常診療において、倦怠感を訴える患者に遭遇することは少なくない。特にコロナ禍の特異的な状況を経て、倦怠感を訴えるケースは増加したと感じる。倦怠感を惹起し得る疾患は多岐にわたる。倦怠感の病因を内分泌疾患に見出すためには、患者の意味する倦怠感を紐解く問診を工夫すること、得られた病歴・理学所見からさまざまな内分泌疾患を鑑別するための随伴症状・身体所見を知り、一般検査での検査値異常にも留意しておく必要がある。
1.倦怠感の背景にある多様な病態
倦怠感は周囲から捉えにくい自覚症状であり、いわゆる不定愁訴として過小評価されやすい。そのため、倦怠感以外の随伴症状を探りながら、倦怠感の程度とその変化に着目して診察する。図1に示すように、倦怠感をきたし得る病態には、内分泌疾患を含めて30種以上の病態・疾患が含まれる。内科疾患では、種々の慢性感染症や悪性腫瘍、膠原病などの自己免疫性疾患、線維筋痛症などの慢性疼痛、各種の神経疾患や睡眠障害が挙げられる 1)。
この倦怠感をきたす病態の鑑別において、特に困難な部分は、身体的Physicalな疲労と、精神的Mentalな疲労の両者が混在しやすい点である。倦怠感を鑑別する場合は、内科・総合診療的視点が基軸となって対応するが、精神科・心療内科的視点も鑑別診断において必要となる。重要なファーストステップは、患者に寄り添う姿勢である。次に大事なことは、倦怠感に伴う随伴症候をキャッチすること、そして症状の変化を定期的診察においてフォローアップすることである 2)。