2.肥満のある2型糖尿病の経口血糖降下薬(非インスリン)療法
1.2型糖尿病と肥満の現状
日本における「国民健康・栄養調査 2019年」によると、HbA1c 6.5%以上または糖尿病の治療を受けていると答えた、「糖尿病が強く疑われる」人の割合は、男性 19.7%、女性 10.8%であった。前年度に比べ、男性で1.0ポイント、女性で1.5ポイント上昇し、2009年以降で最も高い数値を示した。また、肥満に関しても、体格指数(body mass index:BMI)が25kg/m2以上の肥満の割合は、男性で33.0%、女性で22.3%に上り、男性では2013年から有意に増加している。特に男性では40代(39.7%)、50代(39.2%)、と働き盛りとされる中高年世代の40%近くが肥満となっている 1)。
全国の糖尿病専門クリニックに通院する患者を中心とする多施設共同研究である、糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)に登録された2型糖尿病患者の平均 BMIは、調査開始時の2003年には平均24.2kg/m2だったが、2013年に25.0kg/m2、2021年は24.8kg/m2となっており、肥満を伴う2型糖尿病患者が増加していることがうかがえる 2)。
これまで、欧米人と比較するとインスリン分泌能が低く高度肥満になりにくいとされてきた日本人ではあるが、上記のように肥満者・高度肥満者の割合が上昇していることからも、2型糖尿病患者における肥満対策は喫緊の課題である。
2.肥満を伴う患者に対する薬剤の選択について
―2型糖尿病に対する薬物療法のアルゴリズムより―
この数年、SGLT2阻害薬(SGLT2i)やGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が慢性腎臓病(CKD)の進展を抑制し、また心血管死や心不全のリスクを低下させ、予後を改善させる作用を有することが多く報告され、糖尿病薬としては今までにない画期的な存在となりつつある 3~6)。
それを受け、2022年9月23日には、米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)から、「ADA/EASD 2型糖尿病の血糖管理に関するコンセンサスステートメント」の2022年度版が共同で発表されたが、上記のSGLT2iとGLP-1RAの心血管および腎臓のアウトカム試験の結果を取り入れ、心腎保護のための広範な推奨事項を示している。さらに、糖尿病とアテローム性動脈硬化性心血管疾患(CVD)、心不全(HF)、CKDなどを併発する高リスク患者に対する治療サポートについても盛り込まれた 7)。今回特筆すべきは、血糖降下薬の選択に際して体重コントロール達成を前面に出した項目が拡大されたことである(図1)。また、前回と同様に各薬剤における体重への影響の有無を示している(図2)。

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