4.心血管疾患のある2型糖尿病の経口血糖降下薬(非インスリン)療法

  • 辻本哲郎 Tsujimoto, Tetsuro
    虎の門病院分院 糖尿病内分泌科
公開日:2023年1月31日

はじめに

 2型糖尿病は心血管疾患のリスクファクターであり、実際に心血管疾患を発症することはまれなことではない。本稿では心血管疾患のある2型糖尿病患者に対して、どの糖尿病治療薬を使用すべきか検討したい。
 近年、経口血糖降下薬が増え、多くの介入試験が施行されている。われわれは治療薬それぞれの持つ作用を理解するとともに、イベント抑制効果が十分に実証されているかどうかについても理解しておく必要がある。そして、特に心血管疾患のある2型糖尿病患者で注目したい薬剤がSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬であり、その2製剤を中心に概説する。また、糖尿病患者において低血糖がしばしば問題になるが、低血糖と心血管イベントとの関係についても触れておきたい。

1.SGLT2阻害薬

1)SGLT2阻害薬の作用機序

 SGLT2阻害薬は、近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制することで尿糖排泄を促進し、血糖低下作用を発揮する。さらに体重減少、降圧、脂質改善といった効果なども認められている。また、インスリンを介した作用とは異なるため、単独では低血糖を来す可能性は低い。ただし、血糖低下作用は近位尿細管を介する作用であり、腎機能が低下した患者ではその効果が減弱するため、腎不全や透析例に血糖コントロール目的には使用しない。

2)SGLT2阻害薬の多面的効果

 大規模臨床試験において、SGLT2阻害薬は心血管疾患を有するといった心血管リスクの高い2型糖尿病患者の心血管イベントを有意に減少させることが実証されている。心血管疾患のある2型糖尿病患者を対象にしたEMPA-REG OUTCOME試験では、エンパグリフロジンの使用により主要評価項目である心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中を合わせた複合心血管イベントのリスクが有意に低下した(図1A 1)。また、心血管死、全死亡、心不全入院のリスクも有意に低下した(図1B ~ D 1)。また、心血管リスクの高い2型糖尿病患者(50%以上に心血管疾患の既往あり)を対象にしたCANVAS試験においても、カナグリフロジンの使用により心血管イベントリスクが有意に低下した 2)

画像をクリックすると拡大します

図1. エンパグリフロジン使用による心血管イベントと全死亡について文献1より)

このコンテンツは糖尿病リソースガイドの有料会員登録後にお読みいただけます。

  • ・糖尿病・内分泌医療を中心に、新しい時代の臨床現場を支援する糖尿病・内分泌プラクティスWebの閲覧が可能
  • ・糖尿病プラクティス(2020~2022年・3年間分)の論文や、本サイトが厳選したスペシャルコンテンツが閲覧可能
  • ・メールマガジン週1回配信 最新ニュースやイベント・学会情報をもれなくキャッチアップ
  • ・糖尿病の治療に関するアンケートに参加可能、回答はメルマガやウェブで公開
  • ・その他、有料会員向けコンテンツ・サービスを企画中!乞うご期待ください
糖尿病の経口血糖降下薬(非インスリン)療法 ―ナラティブとエビデンスで紡ぐ近未来― 一覧へ