3.高齢2型糖尿病の経口血糖降下薬療法

  • 鈴木 亮 Suzuki, Ryo
    東京医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学分野 主任教授
公開日:2023年1月25日

はじめに

 病院や診療所を受診する2型糖尿病患者の7割が65歳以上とされる現在、高齢者糖尿病診療の質の向上は重要なテーマである。高齢糖尿病患者の診療機会が著しく増加している状況を受けて、日本糖尿病学会と日本老年医学会は合同委員会を設置し、2016年に高齢者糖尿病の血糖コントロール目標を発表した。患者の特徴・健康状態に基づく「カテゴリー分類」と、「重症低血糖が危惧される薬剤」の使用有無の組み合わせによってHbA1cの目標値を個別に設定するコンセプトは、高齢者における薬物療法の効果や安全性が薬物の種類のみで決定されるのでなく、若年者以上にさまざまな要因による複合的な影響を受けることを反映している。

1.高齢2型糖尿病の治療の注意点

 高齢者の健康状態は若年世代と比べ個人差が大きい。健康で活発な高齢者が珍しくない一方で、糖尿病自体が臓器障害に加えて認知症やADL低下などのリスクを増大させる危険因子となることから、加齢による健康状態への影響を考慮する必要性が通常より高い。
 高齢者糖尿病の特徴として、食後に血糖値が上昇しやすく、必ずしも空腹時血糖が高くない点が挙げられる。高齢糖尿病患者は低血糖に対する自覚症状がはっきりせず典型的でない(頭がふらふらする、ぼうっとするなど)ことがしばしばあり、対処が遅れがちで重症化しやすい。さらに、重症低血糖と認知機能低下はお互いのリスクを上昇させる 1)。そのため、高齢者では若年者以上に低血糖リスクを回避することが重要となる。
 糖尿病を有する高齢者は非糖尿病者と比較して筋肉量や筋力が低下しやすく、サルコペニアが進みやすいことが知られている 2)。糖尿病を有していると転倒や骨折のリスクも高く、基本的ADLと手段的ADLの両者ともに低下しやすい 3)

このコンテンツは糖尿病・内分泌プラクティスWebをご購読後にお読みいただけます。

明日の臨床に役立つ時宜を捉えたテーマについて、内分泌代謝・糖尿病内科領域のエキスパートが解説。
毎週論文が更新され、いつでも “オンライン” で日常診療に役立つ情報をアップデートできます。

最新のアップデートに加え、これまでの掲載してきた100論文以上を読み放題です。
この機会に読みたかった論文に加え、気になる特集やセミナーを見つけてください。

■特 集(https://practice.dm-rg.net/main
内分泌代謝・糖尿病内科領域から押さえておきたい選りすぐりのテーマを、エキスパートが徹底解説。

■セミナー( https://practice.dm-rg.net/special
セミナー基礎医学から臨床に役立つ実践的な内容まで、多種多様なコーナーが学びをサポート。

■連 載(https://practice.dm-rg.net/series
独自の切り口と多彩な情報が満載、知的好奇心を刺激する連載。

糖尿病の経口血糖降下薬(非インスリン)療法 ―ナラティブとエビデンスで紡ぐ近未来― 一覧へ 『1巻1号(2023年 1・2月号)』(発行号ページ)へ

セミナー

連載