(扉)特集にあたって

  • 野田光彦 Noda, Mitsuhiko
    国際医療福祉大学 市川病院 教授(糖尿病・代謝・内分泌内科)
公開日:2023年1月12日
No:a0001/https://doi.org/10.57554/a0001

 Web版糖尿病・内分泌プラクティス(『糖尿病・内分泌プラクティスWeb』)の記念すべき劈頭を飾る特集として、今、まさしく百花繚乱ともいえる賑わいを見せている糖尿病の非インスリン療法に着目し、心置きなく縦横に企画を立案させていただいた。今回の特集では、糖尿病診療のいわば要石ともいえるこの領域を、絢爛無比な執筆陣によって多彩な観点から論考していただいている。まさに糖尿病診療の近未来を予見しうる企画となっているものと自負している。
 本特集では、冒頭、能登 洋先生に、2型糖尿病において一般的に最初に勧められる薬剤をテーマに、2型糖尿病治療の現状から説き起こして主題へと肉薄し、結論を浮き彫りにしていただいた。次いで、加藤さやか先生と浅原哲子先生には、肥満を伴う糖尿病患者に対する薬剤の選択について、内外の知見を概観したうえで各薬剤の特徴について詳述していただいている。さらに、鈴木 亮先生には、高齢者糖尿病診療の注意点を高齢者の薬物動態の側面から論を進めつつ、各薬剤クラスの適応とシックデイにおける対応までへも敷衍していただいた。
 後半では、まずは辻本哲郎先生に、心血管疾患のある2型糖尿病患者の治療法について、薬剤の作用機序とエビデンスの側面を中心に、要を得た解説を展開していただき、次いで、角谷佳則先生と繪本正憲先生には、腎機能低下時の薬剤選択について、腎保護作用を期待しうる積極的な方策を含めて、臨床の現場に則してご記載いただいている。最後に、藤井博之先生に、2型糖尿病における服薬アドヒアランスや、それを向上させる調剤手法なども含めて、薬剤師の立場から、日頃のご経験も踏まえて、糖尿病処方の問題点を具体的に描出していただいた。
 本特集の執筆陣は、名実ともにその分野に専門性を有する方々であり、それぞれに糖尿病の経口血糖降下薬(非インスリン)療法に光を当てていただいた。ご執筆の先生方のご尽力を多とするとともに、有用な知識の提供されている今回の解説群により、読者諸賢の理解が一段と深まり、それによって得られたものを臨床の現場にフィードバックしていただければ、特集の企画者としてこのうえない喜びである。

著者のCOI (conflicts of interest)開示:本論文発表内容に関連して特に申告なし

糖尿病の経口血糖降下薬(非インスリン)療法 ―ナラティブとエビデンスで紡ぐ近未来― 一覧へ