5.骨粗鬆症の薬物療法

  • 髙士祐一 Takashi, Yuichi
    福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科学 講師
公開日:2023年4月11日
No:a0021/https://doi.org/10.57554/a0021

1.薬物療法の開始基準

 骨粗鬆症の治療の目標は、合併症としての脆弱性骨折を防ぐことである。では、骨粗鬆症の薬物療法はいつから開始すべきなのだろうか。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」には、原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準が定められている 1)。まず、大腿骨近位部骨折または椎体骨折の脆弱性骨折がある場合には、骨密度に関係なく骨粗鬆症として薬物療法の開始が推奨されている。肋骨や骨盤(恥骨、坐骨、仙骨を含む)、上腕骨近位部、橈骨遠位端、下腿骨に脆弱性骨折がある場合には、骨密度が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の80%未満で薬物療法を開始する。脆弱性骨折がない場合は、骨密度がYAMの70%以下あるいはTスコアー2.5以下で薬物療法を開始する。骨密度がYAMの70%より大きく80%未満の場合についても、大腿骨近位部骨折の家族歴がある場合、あるいはFRAX®の10年間の骨折確率(主要骨折)15%以上の場合には、薬物療法の開始が推奨される。これらに加えて、「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版」においては、試案ではあるものの、2型糖尿病、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)で骨折リスクが高いと判断される場合には、薬物療法の開始が推奨されている 2)。ちなみに、2型糖尿病では、罹病歴10年以上、HbA1c 7.5%以上、インスリン使用、閉経後女性チアゾリジン使用、喫煙、重症低血糖が危惧される薬剤の使用、転倒リスクが高い場合を骨折リスクが高い状態と考える。

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