6.二次性骨折予防と骨粗鬆症リエゾンサービス
はじめに
超高齢社会の進行とともに原発性骨粗鬆症による脆弱性骨折の発生が、健康寿命の延伸にとり大きな足かせとなっている。特に一度臨床的骨折を発症した患者は、再骨折の発生率が高く、骨折直後からの治療介入が極めて重要である。しかしながら、骨折後の治療率が低いことが世界的な問題となっており、新しい診療支援の取り組みが必要となってきた。海外で始まった骨折リエゾンサービス(Fracture Liaison Service:FLS)は、まさに骨折直後の診療支援を推進するものであるが、わが国ではさらに一次予防や社会啓発も含めた骨粗鬆症リエゾンサービス(Osteoporosis Liaison Service:OLS)が日本骨粗鬆症学会により策定された 1)。令和4年4月の診療報酬改定では、手術を行った大腿骨近位部骨折患者に対するFLSに対して、新しく二次性骨折予防継続管理料が設けられ、OLS活動の一部が経済的な担保を得られるようになった 2)。
1.二次性骨折予防継続管理料について
令和4年4月の診療報酬改定で、大腿骨近位部骨折の手術患者に対して、二次性骨折予防継続管理料の算定が認められた 2)(表1)。最も注意すべきポイントは、あくまで「骨折予防」を「継続管理」するための診療報酬であり、ガイドラインとクリニカルスタンダードに則った、計画的かつ経時的な管理を行い、骨折予防をすることが求められていることである。そもそも、初期計画が作られていなければ、継続管理を行うことは不可能なため、手術を行った急性期病院で、二次性骨折予防継続管理料1を算定することが、その後継続管理をする施設で管理料を算定するための必須要件となる。「大腿骨近位部骨折を発症し、手術治療を担う保険医療機関の一般病棟に入院している患者であって、骨粗鬆症の有無に関する評価および必要な治療などを実施した者」が対象患者であるが、この管理料1を算定するためにはいくつかの必要要件がある。基本となる治療開始を行う急性期病院における算定要件の骨子は、
- 医療機関ならびに入院病棟が施設基準に適合し届け出されていること
- 二次性骨折予防を目的として骨粗鬆症の計画的な評価・治療がされていること
- 骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインならびに骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダードに沿った適切な評価および治療がされていること
であり、その施設基準としては、
- 骨粗鬆症の診療を行うにつき十分な体制が整備されていること
- 骨粗鬆症診療を担当する医師、看護師および薬剤師が適切に配置されていること
- 急性期一般入院基本料、地域一般入院基本料または7対1入院基本料もしくは10対1入院基本料に関わる届け出がされていること
である。
この初期計画と診療開始がされた患者に対して、施設基準を満たした回復期病院などへの転院後、リハビリテーションなどを担う地域包括ケア病棟または回復期リハビリテーション病棟へ入院し、急性期病院で開始された治療を継続管理した場合に、入院中一回に限り二次性骨折予防継続管理料2が算定可能である。さらに、外来診療に移行した後は、継続して骨粗鬆症の計画的な評価および治療が行われた場合、二次性骨折予防継続管理料3の算定開始月から12カ月間月一回管理料3が算定可能である。外来診療で管理料3を算定する医療機関もあらかじめ届け出を行う必要があるが、これは管理料1もしくは管理料2を算定した医療機関と同一であっても別の医療機関であってもよい。なお薬剤師に関しては、常勤薬剤師が配置されていない場合、連携する医療機関などと連携して医療体制を整えてもよい、とされている。
この二次性骨折予防継続管理料が新設されたことで、これまで医療現場で自主的に行われてきた骨折予防の取り組みの一部に経済的な支援が可能となったことは画期的である。外来診療で継続管理料3の算定する医療機関は、整形外科には限定されず、他の慢性疾患管理を同時に行う内科などにその役割が求められることも多い。リエゾンサービスによる二次性骨折予防継続に対する正しい理解と連携体制のさらなる構築が求められている。