3.甲状腺中毒症の鑑別診断と治療
公開日:2023年7月28日
No:a0051/https://doi.org/10.57554/a0051
はじめに
甲状腺中毒症の鑑別は、甲状腺摂取率検査が施行できれば比較的容易であるが、施行できる施設は限られている。本稿では、甲状腺摂取率検査が施行できない状況下での鑑別の進め方、特にバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別について解説する。甲状腺中毒症の治療に関しては、バセドウ病の抗甲状腺薬(ATD)による治療を中心に解説する。
1.甲状腺中毒症とは
甲状腺中毒症とは、血中の甲状腺ホルモンが過剰になる状態をいう。血中の甲状腺ホルモンが過剰になる原因には二つある。一つは甲状腺ホルモンの合成・分泌が高まった状態(甲状腺機能亢進症)、もう一つは何らかの原因により甲状腺濾胞が破壊され甲状腺ホルモンが漏出する状態(破壊性甲状腺中毒症)である。甲状腺中毒症では、甲状腺ホルモンである遊離サイロキシン(FT4)、遊離トリヨードサイロニン(FT3)が高値になり、甲状腺刺激ホルモン(TSH)は低値となる。FT4・FT3は正常だがTSHが低値の状態を潜在性甲状腺中毒症という。