5.内科での甲状腺腫瘍の診かた
公開日:2023年8月23日
No:a0053/https://doi.org/10.57554/a0053
はじめに
臨床的に遭遇する甲状腺腫瘍の大部分は良性腫瘍であり、圧迫症状や甲状腺機能亢進症を呈さない限り、治療の必要はほとんどない。外来診療でのポイントは治療を要する甲状腺癌を見落とさないことである。これには超音波検査と穿刺吸引超音波検査が極めて有用である。甲状腺癌の約90%を占める乳頭癌はほぼ診断可能であるが、濾胞癌を診断することは難しい。
1.超音波検査
超音波検査は非侵襲で、外来で容易に施行できる。超音波機器の進歩で空間分解能も高くなり、Bモード以外カラードプラやエラストグラフィなどのモダリティもあり、甲状腺腫瘍の診断に極めて有用である。
超音波検査の観察ポイントは甲状腺を含めた頸部領域を9区分して観察し、甲状腺病変の見落としを防ぐことが重要である(図1) 1)。見落としやすいポイントとして甲状腺上極と下極、錐体葉と甲状腺峡部、甲状腺の背面、気管の近傍、腫瘍の近傍である(図2) 1)。日本超音波医学会の甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準を表1に示す 2)。良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別に有用性が高い、①形状、②境界の明瞭性・性状、③内部エコー(エコーレベル・均質性)を中心に観察する。また、④微細高エコーの有無、⑤境界部低エコー帯も観察する。
乳頭癌の典型例では形状不整、境界部不明瞭で粗雑、内部エコーは低で不均質、微細高エコーが多発し、境界部低エコー帯は不整ないしは欠如している(図3)。

甲状腺を含め、頸部を9領域に分けて観察する