4.甲状腺機能低下症の鑑別診断と治療
公開日:2023年8月2日
No:a0052/https://doi.org/10.57554/a0052
はじめに
甲状腺ホルモンの作用は「代謝の亢進」であり、全身の諸臓器に作用する。甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの作用が不足している状態であり、臨床症状として、全身倦怠感、無気力、動作緩慢、耐寒性の低下、傾眠、体重増加、浮腫、便秘、嗄声、徐脈などを呈する。甲状腺ホルモンは視床下部-下垂体-甲状腺系により制御され、障害部位によって甲状腺におけるホルモン産生・分泌障害に起因する原発性甲状腺機能低下症と、視床下部・下垂体障害による中枢性甲状腺機能低下症に大別される。また重症度により顕性と潜在性に分類され、潜在性甲状腺機能低下症を含めると人口のおよそ10%を占める頻度の高い疾患である。多くは慢性甲状腺炎による原発性甲状腺機能低下症だが、病型や患者背景によって治療目標や治療上の注意点が異なるため、鑑別診断が重要である。